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局所水素濃化によるAl-Zn-Mg合金の水素脆化挙動のマルチモーダル3Dイメージベース解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K13564
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分26040:構造材料および機能材料関連
研究機関九州大学

研究代表者

藤原 比呂  九州大学, 工学研究院, 助教 (00943747)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
キーワードアルミニウム合金 / 水素脆化 / X線イメージング / イメージベース解析 / 結晶塑性有限要素解析 / 水素拡散解析
研究開始時の研究の概要

本研究では、応力下での水素濃化挙動を予測することで、局所的な水素濃化により生じるアルミニウム合金のナノスケールでの破壊挙動とマクロな水素脆化挙動をブリッジングする。その際、X線イメージング技術を用い、ナノ欠陥やミクロ組織、マクロな水素脆化挙動を3D可視化し、3Dイメージベースシミュレーションへと発展させる。そして、高精度な予測と実際のHE挙動を統合し、アルミニウム合金のHE発生に対する真のHE発生基準を明らかにする。

研究実績の概要

本研究では、マルチモーダル3Dイメージベース解析により、実際の水素脆化ないし応力腐食割れ(SCC)領域での応力・歪み・水素濃度を予測することでアルミニウム合金の水素脆化およびSCC発生基準を明らかにすることを目的としている。
X線トモグラフィーおよび回折コントラストトモグラフィー法(DCT)によるミクロ組織と破壊挙動を3D/4Dイメージングした。得られた3D情報をもとに作成した3Dイメージベースモデルを用い、負荷中の亀裂先端での水素濃化挙動を解析したところ、負荷を10分保持した際、亀裂先端で無負荷時に比べ最大1.8倍水素が濃化することが明らかとなった。進展後の亀裂先端の位置における析出物界面の界面凝集エネルギーの減少率は、無負荷の状態に比べてわずか7%であった。すなわち、水素脆化亀裂の進展は、応力分布と水素濃度分布だけでなく、亀裂進展中のこれらの値の連続的な変化にも依存すると考えられる。亀裂進展は水素拡散よりも速く亀裂前方の水素濃度が連続的に低下し、進展途中で水素脆化基準が満たされなくなり亀裂が鈍化する。その後、亀裂前方の水素濃度・応力が析出物の剥離が起こるレベルに再度達すると亀裂が進展する。以上のことから、析出物界面への動的水素分配が亀裂の発生と進展に寄与する可能性があると結論した。
これに加え、外部環境を制御(水中/Ar雰囲気)し、外部水素による水素脆化・SCCへの影響を3D/4D解析したところ、外部環境による亀裂の発生・進展の双方が促されることが示された。試験片中の水素濃度は実用材料に比べて20倍以上高いにも関わらず、Ar環境では亀裂の発生・成長がほとんど見られず、亀裂の発生・進展には特に侵入水素の影響が大きいと考えられる。腐食により①亀裂の早期発生と、②早期発生亀裂の成長がともに助長され脆性的な破壊へつながるものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

水素拡散解析にミクロスケールの応力分布の評価が可能な結晶塑性有限要素解析(CPFEM)を連成させた解析をイメージベースかつ3次元で行うことで実際の水素脆化挙動と応力・水素濃度分布の関係を直接評価が可能となる。CPFEMの低い精度が水素脆化基準の議論に対するボトルネックとなっていたが、実際の試験片中の3D歪み分布をもとにしたパラメーターの校正による高精度化を達成した。また、これまでに確立したこのマルチモーダル3Dイメージベース解析をさらに発展させ、水素脆化の起点と考えられる析出物界面への水素分配挙動と実際の水素脆化亀裂進展挙動との直接比較を可能にした。加えて、より実問題として現れる応力腐食割れの解明に向け、外部水素や腐食による水素脆化・応力腐食割れの3D/4D解析を先行して進めており、腐食環境による亀裂発生および進展のその場観察に成功している。以上のようにマルチモーダル3Dイメージベース解析を発展させ、析出物界面への動的水素分配と亀裂の発生・進展との関係を明らかにしたことに加え、外部環境による破壊現象の解析を先行して進められていることから、計画以上に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

初年度に外部環境を制御し水素脆化および応力腐食割れ試験を行った試料について、回折コントラストトモグラフィー法(DCT)により3次元(3D)結晶粒像を再構成する。そして、腐食や亀裂の発生および進展挙動に対する結晶学的因子の影響について3D解析する。また、同試料の結晶組織を再現した3Dイメージベースモデルを作製する。そして、内部水素だけでなく腐食により外部から侵入した水素の双方の応力下での拡散挙動を考慮したマルチモーダル3Dイメージベース解析法を構築し実施する。その際、試験片表面で水素が濃化した状態を初期条件とすることで、水とアルミニウムの反応による外部からの水素侵入を模擬する。これにより、析出物界面の剥離およびそれに伴う水素脆化・応力腐食割れの発生に対する水素濃度・腐食・応力・歪みの影響を統合した条件を提案する。加えて、水素脆化亀裂の発生・進展・遷移挙動それぞれに対する材料・力学的・化学的因子それぞれの影響および相互作用について整理し、水素脆化挙動の解明および対策指針の確立を目指す。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件)

  • [雑誌論文] Assessment of hydrogen embrittlement behavior in Al-Zn-Mg alloy through multi-modal 3D image-based simulation2024

    • 著者名/発表者名
      Fujihara Hiro、Toda Hiroyuki、Ebihara Ken-ichi、Kobayashi Masakazu、Mayama Tsuyoshi、Hirayama Kyosuke、Shimizu Kazuyuki、Takeuchi Akihisa、Uesugi Masayuki
    • 雑誌名

      International Journal of Plasticity

      巻: 174 ページ: 103897-103897

    • DOI

      10.1016/j.ijplas.2024.103897

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Al-Zn-Mg合金の粒界亀裂進展挙動のマルチモーダル3Dイメージベース解析2024

    • 著者名/発表者名
      比嘉良太,藤原比呂,戸田裕之,海老原健一,眞山剛,竹内晃久,上椙真之
    • 学会等名
      軽金属学会第146回春期大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Assessment of propagation behavior of intergranular cracks in 7XXX alloy by combining crystal plasticity finite element method and hydrogen diffusion analysis2024

    • 著者名/発表者名
      Ryota Higa, Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Ken-ich Ebihara, Masayuki Uesugi, Akihisa Takeuchi
    • 学会等名
      The 19th International Conference on Aluminium Alloys (ICAA19)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Influence of internal and external hydrogen on stress corrosion cracking behavior in Al-Zn-Mg alloy2024

    • 著者名/発表者名
      Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Ken-ich Ebihara, Daiki Shiozawa, Masayuki Uesugi, Akihisa Takeuchi
    • 学会等名
      The 19th International Conference on Aluminium Alloys (ICAA19)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] マルチモーダル3Dイメージベース解析を用いたAl-Zn-Mg合金における水素脆化挙動評価2023

    • 著者名/発表者名
      藤原比呂,戸田裕之,海老原健一,小林正和
    • 学会等名
      M&M・CMD若手シンポジウム2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Al-Zn-Mg合金の粒界亀裂進展に及ぼす水素濃化挙動の影響2023

    • 著者名/発表者名
      比嘉良太, 藤原比呂, 戸田裕之, 海老原健一, 平山恭介, 清水一行
    • 学会等名
      日本機械学会 M&M2023 材料力学カンファレンス
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Al-Zn-Mg合金の応力腐食割れ挙動に対する内部および外部水素の影響2023

    • 著者名/発表者名
      藤原比呂, 戸田裕之, 海老原健一, 平山恭介, 清水一行
    • 学会等名
      日本機械学会 M&M2023 材料力学カンファレンス
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Al-Zn-Mg合金の水素脆化挙動に対する内部および外部水素の影響2023

    • 著者名/発表者名
      藤原比呂、戸田裕之、海老原健一、平山恭介、清水一行、竹内晃久、上椙真之
    • 学会等名
      軽金属学会第145回秋期大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 結晶塑性有限要素法と水素拡散解析によるAl-Zn-Mg合金の粒界亀裂進展挙動の評価2023

    • 著者名/発表者名
      比嘉良太, 藤原比呂, 戸田裕之, 海老原健一, 小林正和, 竹内晃久, 上椙真之
    • 学会等名
      軽金属学会第145回秋期大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Assessment of hydrogen embrittlement behavior in Al-Zn-Mg alloys by multimodal 3D image-based simulation2023

    • 著者名/発表者名
      Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Kenichi Ebihara, Masakazu Kobayashi, Kazuyuki Shimizu, Akihisa Takeuchi, Masayuki Uesugi
    • 学会等名
      2023 International Hydrogen Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Assessment of hydrogen embrittlement behavior in Al-Zn-Mg alloy via multi-modal 3D imagebased analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Ken-ichi Ebihara, Masakazu Kobayashi, Masayuki Uesugi, Akihisa Takeuchi
    • 学会等名
      ATEM-iDICs '23
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Influence of crystal plasticity and hydrogen diffusion under stress on intergranular crack propagation in AlZn-Mg alloy2023

    • 著者名/発表者名
      Ryota Higa, Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Kenichi Ebihara, Masakazu Kobayashi
    • 学会等名
      ATEM-iDICs '23
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Influence of internal and external hydrogen accumulation behavior on stress corrosion cracking behavior in Al-Zn-Mg alloy2023

    • 著者名/発表者名
      Hiro Fujihara, Hiroyuki Toda, Ken-ichi Ebihara, Masayuki Uesugi, Akihisa Takeuchi
    • 学会等名
      MRM2023/IUMRS-ICA2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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