研究課題/領域番号 |
23K13567
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
仲山 啓 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (30732193)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 走査透過型電子顕微鏡法 / その場観察 / Li挿入 / 原子分解能電子顕微鏡 / 蓄電池 / 充放電反応 / 酸化還元反応 |
研究開始時の研究の概要 |
蓄電池開発を飛躍的に加速させるためには,充放電反応(正極・負極での酸化還元反応)に伴う局所構造変化の原子レベルかつ動的な理解が必要不可欠である.本研究では,(i)方位制御が容易な単結晶もしくは高配向性の試料,(ii)反応箇所の制御を可能にする特殊試料ホルダー,(iii)原子分解能電子顕微鏡を組み合わせた独自の手法を構築し,蓄電池電極材料の酸化還元反応に関する原子レベルのその場観察技術を確立することを目的とする.
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研究実績の概要 |
(1)電子顕微鏡内でのLi挿入 MoS2単結晶からの剥離法により、STEM観察用薄片試料を作製した。この試料に、特殊試料ホルダーの可動プローブに付着させたLi(大気暴露)を電子顕微鏡内で接触させ、低倍率での環状暗視野走査透過型電子顕微鏡法(ADF-STEM)によるその観察を実施した。その結果、プローブとの接触箇所から試料内部へと像コントラストの変化が広がる様子が観察された。電子エネルギー損失分光法により、コントラストが変化した領域にはLiが存在することが明らかになり、所望のLi挿入反応が起こったことが確認された。 (2)Li挿入過程のサブナノメートル分解能その場観察 プローブと試料の接触方法、試料方位の制御方法、観察時の電子線照射量やカメラ長、および像取得のフレームレート等の条件を最適化し、MoS2へのLi挿入反応に対して高倍率でのADF-STEM観察を実施した。結果として、原子レベルの局所構造変化が議論可能な、サブナノメートル分解能でのコントラスト変化の観察を達成した。生データにおけるコントラスト変化の視認性は低いものの、フーリエ変換で得られるパターンにおける離散的なピークの位置の変化や新たなピークの出現から、微細構造変化が段階的に起こることが明らかになった。また、空間周波数フィルターや時間方向への移動平均フィルターを施したデータにおいては実空間でもコントラスト変化が明瞭に視認され、Li挿入に伴う段階的なドメイン構造の形成が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は「電子顕微鏡内で電極材料の酸化還元反応を生じさせ、その過程を原子分解能でその場観察する」技術の開発である。2023年度の結果から、この目的に対する最低限の水準の達成にはある程度の目処が付いたと考えている。一方で、本技術の意義を大きくするためには、「酸化還元反応が電気化学的に起こされていること(が保証されていること)」が望まれると考えているが、この点はまだ達成されていない。これらの状況を考慮し、進捗状況はおおむね順調であるとした。
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今後の研究の推進方策 |
(本研究課題の装置構成における)電子顕微鏡内での電気化学的なLi脱離もしくは挿入の達成に取り組む。2023年度に得た予備的な実験結果から、最も重要な課題は適切な電解質の選定と考えている。そこで、電解質材料を中心に、作用極・電解質・対極材料の適切な組み合わせ、およびこれら材料の接触方法等について検討し、電子顕微鏡内での電気化学的なLi脱離・挿入反応の実現を目指す。この目標が達成された場合には、2023年度に得たノウハウを活用して、Li脱離・挿入反応の原子分解能その場観察の達成に取り組む。
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