研究課題/領域番号 |
23K13568
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
米田 鈴枝 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30806005)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 高温エロージョン・コロージョン / 高温腐食 / 析出物 |
研究開始時の研究の概要 |
エロージョン(摩耗)とコロージョン(腐食)が共存する高温環境下では、高温エロージョン・コロージョン(以降高温E-C)により金属材料が激しく損耗する。本研究では、ボールミルによる合金粉末作製およびSPSを用いた焼結により種々の析出物サイズ・析出物量を有する合金を作製し高温E-C試験を行うことで、高温E-C性と合金組織との関係を検討し、多相合金の高温E-Cメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、エロージョン(摩耗)とコロージョン(腐食)が共存する環境で金属材料が激しく損耗する現象である、高温エロージョン・コロージョン(以降高温E-C)性に及ぼす析出物の影響を調査し、多相合金の高温E-C機構を明らかにすることを目的としている。 R5年度は、析出物の体積割合の異なる種々のNi-Cr-B系合金の作製とその合金の高温腐食性の評価を行った。状態図をもとに合金組成を決定し、純金属粉末、ホウ化物(CrB)粉末から遊星ボールミルにより合金粉末を作製し、放電プラズマ焼結を用いて適切な焼結条件で合金粉末を焼結することにより、目的の析出物割合、また、合金母相組成を有する合金を作製することができた。 ホウ化物の体積割合が0%、15%および30%の合金を大気中およびNaCl-40mol.%KCl-20mol.%CaCl2混合塩を0.1wt.%含む硅砂中、550℃および750℃で酸化・腐食させ、酸化挙動および腐食挙動に及ぼす析出物の影響を調査した。酸化および腐食後の質量増加量は、ホウ化物の体積割合0%および15%合金では同程度であったが、30%合金では0, 15%合金と比較して著しく増大することがわかり、耐酸化・腐食性の観点からは最適なCrホウ化物量が存在することが示唆された。いずれの合金上にも、保護性のクロミア(Cr2O3)皮膜の形成が認められたが、その厚さは30%合金で厚くなっていた。また、X線回折により30%合金ではCrBO3の形成が確認されたことから、Crホウ化物の酸化により形成したCr2O3とB2O3が反応し、CrBO3が形成したと考えられ、このCrBO3の形成により30%合金では酸化増量が増加したと推察される。 合金が作製でき、酸化および腐食実験により各合金上に形成する酸化皮膜を把握することができたため、高温E-C試験に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はホウ化物と炭化物の両方が存在する合金系での調査を予定していたが、各析出物の影響をより明確にするため、まずはホウ化物のみが存在する系での評価とした。放電プラズマ焼結を用いた合金作製の焼結条件決定に時間を要したが、予定通りR5年度内に合金作製方法を確立できた。合金作製後、高温E-C試験を始める予定であったが、種々の合金上に形成する酸化皮膜や酸化・腐食挙動に及ぼす析出物およびその割合の影響を調査することで高温E-C挙動の理解が深まると考え、まずは酸化および腐食のみの試験から始め、析出物の影響に関する知見を得ることができた。 高温E-C試験は、流動床式の装置ではなく、硅砂をプロペラで巻き上げ試料に硅砂を衝突させる装置で行うことにし、装置の改良および実験条件出しを行った。最適な条件を見出し、高温E-C試験にもR5年度中に取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度で高温E-C試験のための条件出し等が完了したため、R6年度以降は本格的に高温E-C試験を行っていく。まずはR5年度の研究で使用していたNi-Cr-B合金の高温E-C試験を行う。具体的には、700℃に加熱した硅砂を試料に衝突させ、試験前後の試料の質量変化および組織観察結果から高温E-C性を評価し、高温E-C挙動と析出物量の関係を検討する。また、現状では析出物サイズは1~2μmであり、サイズの影響は評価できていないため、使用するホウ化物粉末の粒子径を変化させることにより、析出物サイズの異なる合金の作製を試み、高温E-Cにおよぼす析出物サイズの影響も調査する。 上記の検討により明らかになった高温E-C性に対する最適な析出物量とサイズからなるFe-Cr-B合金の高温E-C試験を行いNi-Cr-B合金の結果と比較する。過去の先行研究から、Ni基合金よりもF基合金の方が高温E-C性に優れることがわかっているため、高温E-Cに対して最適な母相組成と合金組織に際に、それらが相乗効果をもたらすかどうかを検討する。 得られた結果に基づいて、多相合金の高温E-C機構を検討する。
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