研究課題/領域番号 |
23K13581
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
東野 昭太 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (70908095)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 電析 / アルミニウム / めっき / 溶存酸素 / イオン液体 / 深共晶溶媒 |
研究開始時の研究の概要 |
アルミニウムの成膜技術として、電気めっき(電析)が注目されているが、これまで開発されてきた電析浴(電解液)は、水分や酸素を除去した環境でなければ取り扱えないという問題があった。申請者は最近、酸素に対して安定であり、水分さえ除去すれば平滑なアルミニウム膜が得られる電析浴を発見した。本研究では、酸素がアルミニウム電析に及ぼす悪影響と好影響の両方を解明し、新しい平滑アルミニウム膜の電析法を提案する。
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研究実績の概要 |
金属アルミニウム(Al)は耐食性や耐酸化性に優れることから、表面コーティング材として有用である。Alの成膜技術として、電気めっき(電析)が注目されている。しかし、イオン液体など従来のAl電析浴は、水分や酸素が存在する環境では電析不良を起こすため、これを防ぐために窒素などの不活性ガス中に密閉して取り扱う必要がある。このような密閉環境では操作性が悪いため、大量生産に適しておらず、Al電析の産業利用が実現されない一因となっている。 申請者は最近、酸素に対して安定であり、除湿さえすれば密閉環境でなくともAl電析が可能な浴を発見した。さらにこの浴では、単に酸素が存在してもAl電析が可能であるというだけでなく、不活性ガス中では得られない平滑なAl膜が得られる。この実験事実は、「酸素が存在する環境ではAl電析浴を取り扱うことが出来ない」という定説を根本から覆す。本研究では、乾燥空気を積極的に利用する平滑Al膜の電析法を提案すべく、酸素がAl電析に及ぼす影響を解明することを目指す。 令和5(2023)年度の主な取り組みとして、溶存酸素が存在する電析浴における浴成分の変化を各種の分光法および質量分析法により調査した。これにより、溶存酸素が存在する環境において、無機成分すなわちAlイオンはほとんど変化しないが、有機成分である溶媒種が変化することが明らかになった。さらにイオン液体からなる浴に関しては、元の溶媒種の分子構造と、溶存酸素の存在下で新たに生成される物質の分子構造から、反応過程を特定することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本年度は分光法による実験により、溶存酸素が存在する環境における電析浴の成分を特定することができた。その一方で、所属機関においてキャンパス移転が実施された関係上、主だった実験装置を年度の途中で使用停止とせざるを得ず、計画していた実験の一部が制限されることとなった。そこで代替案として、実験装置を必要としない量子化学計算により、溶媒種の安定性の評価に取り組んだ。その結果、これまでに得られていた実験事実を補強する結果が得られたことから、量子化学計算の有効性を確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験を通して、溶存酸素が存在する電析浴において、有機成分である溶媒種が変化することが明らかになった。特筆すべき事項として、溶存酸素が存在する環境においてAl膜の平滑化が確認された浴においても、有機成分が変化しており、この生成物が膜の形態の変化に寄与していると考えられる。今年度は、この生成物の詳細な構造決定に取り組むとともに、量子化学計算により求めた分光スペクトルや最低非占有軌道(LUMO)エネルギーを実験結果と比較しながら、電極界面におけるより詳細な反応の描像を得ることを目的とする。
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