研究課題/領域番号 |
23K13589
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松岡 淳 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 助教 (80874833)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 動的共有結合 / 正浸透膜法 / 相分離 / 正浸透膜分離 / 駆動溶液 |
研究開始時の研究の概要 |
水不足が懸念される中、従来の逆浸透膜法よりも省エネルギーな膜技術として、正浸透膜法が注目されている。正浸透膜法にて効率的な海水淡水化を行うためには、高い浸透圧を有し、さらに水から溶質(駆動溶質)を容易に回収できる駆動溶液が必要不可欠である。本研究では、これらの性質を両立しうる全く新しいコンセプトの駆動溶質の開発に挑戦する。具体的には、刺激に応答して可逆的に結合・開裂することのできる動的共有結合を利用し、高浸透圧を示す分子構造と水から容易に回収できる分子構造とを任意に制御することで、高い浸透圧と水からの容易な回収性を両立する駆動溶質の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、動的共有結合を導入することで、分子構造を変化可能なDSを開発し、高浸透圧と容易な分離性を両立することである。動的共有結合は、刺激により可逆的な結合・開裂が可能な共有結合である。本年度においては、pHに応答する動的共有結合であり、アミンとアルデヒドの縮合反応であるイミン形成反応を利用した駆動溶液の開発を行った。アルキルアミンとアルデヒドとして2-pridinecarboxyaldehydeを用いて検討を行った。その結果、アミン/アルデヒド混合物の水溶液は、pHが高い場合は相分離し、pHを低くすると均一相となった。さらに、再びpHを高くすると相分離した。すなわち、親水的なアミンが存在する場合には均一相を形成し、疎水的なイミンが生成すると相分離することが確認された。これらのアミンとアルデヒドは、単独で用いた際には水と完全相溶する親水的な材料であり、高浸透圧を有することも確認した。よって、刺激によって高い浸透圧を有する状態と、水と容易に分離する状態とを変換できることが示された。 当初目標としていたDiels-Alder反応を用いた化学構造の可逆的変換については困難と判断し、検討を中断したが、イミン形成反応を用いた化学構造の可逆変換に成功した。この成果は、本研究において重要なコンセプトである、可逆的な化学構造の変換による高浸透圧を示す状態と水からの容易な回収性を示す状態との構造変換が可能であることを示す重要な結果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていたDiels-Alder反応を用いた化学構造の可逆的変換については、Diels-Alder反応の反応速度が非常に小さかったため、検討困難と判断し中断した。しかしながら、代わりにイミン形成反応を用いた駆動溶液を開発し、これによって、刺激による化学構造の可逆変換に成功した。また、実際に高浸透圧状態と相分離状態との変換にも成功しており、本研究のコンセプトを実証することに成功した。1年目の目的は、本研究で新たに提案する、動的共有結合を利用する駆動溶液の開発コンセプトを実証することである。従って、当初の想定とは異なるものの、研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は最終的に、動的共有結合を用いた高性能駆動溶液について、その分子設計指針を提案することを目的としている。1年目の研究において、イミン形成結合を用いて高浸透圧を有する構造と、水と容易に分離する構造を可逆的に変換できることを実証した。そこで、2年目の研究においては、アミンとアルデヒドの化学構造と、相分離性や浸透圧との関係について検討する。これらを整理することによって、高性能駆動溶液を開発するための分子設計指針の提案を目指す。また、イミン形成反応はpH応答性の反応である。よって、新たな課題として、プロセス中においてどのようにpH制御を行うのかという課題が生じた。この解決策として、酸性ガスである二酸化炭素によって駆動溶液のpHを制御することを試みる。よって、二酸化炭素によって可逆的に相分離を起こすような駆動溶液の開発に挑戦する。
|