研究課題/領域番号 |
23K13590
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平野 知之 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40963674)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 酸化物 / ナノ構造化 / 火炎法 / 火炎噴霧熱分解法 / 細孔制御 / 耐久性 / マクロポーラス微粒子 / 気相燃焼合成法 / エアロゾルプロセス |
研究開始時の研究の概要 |
燃料電池技術のさらなる普及のために,固体高分子形燃料電池の活性と耐久性の向上が急務となっている。特に,燃料電池の耐久性向上のために,カーボンの代替材料として金属酸化物担体の開発が検討されており,カーボンを凌駕するガス拡散性と発電性能を付与させることが求められている。本研究では,触媒粒子をナノ構造化することによって微粒子形態を反映した細孔ネットワークを触媒層に形成し,燃料電池触媒として重要な因子であるガス拡散性と液体保持力・排出力を制御して,燃料電池としての耐久性と性能を向上させることを目的とする。
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研究実績の概要 |
燃料電池技術のさらなる普及のために,固体高分子形燃料電池の活性と耐久性の向上が急務となっている。本研究では,触媒粒子をナノ構造化することによって微粒子形態を反映した細孔ネットワークを触媒層に形成し,燃料電池触媒として重要な因子であるガス拡散性と液体保持力・排出力を制御して,燃料電池としての耐久性と性能を向上させることを目的とする。2023年度は,(1)火炎法による導電性酸化物(アンチモンドープ酸化スズ)ナノ粒子の微細ナノ構造設計と,(2)FIB-SEM・TEM・X線CTを用いた細孔構造の三次元解析を行った。 (1)火炎法による導電性酸化物ナノ粒子の微細ナノ構造設計:本研究では酸化物ナノ粒子の凝集構造を利用した燃料電池触媒担体の開発を実施している。凝集体におけるナノ粒子間の空隙は,ガス拡散および生成水保持・排出のためのメソ孔として利用できる。ここでは,火炎法を用いることで,ナノ粒子間空隙構造をナノ粒子のサイズをシングルナノメートルオーダーで制御することを可能とした。バーナへの原料溶液供給速度を,従来の1/10以下とすることで,数ナノ程度の粒子も合成できた。 (2)FIB-SEM・TEM・X線CTを用いた細孔構造の三次元解析:微粒子のナノ構造化により形成された細孔のネットワーク構造を三次元的に解析するために,FIB-SEM・TEM・X線CTを用いたサンプルの観察を行った。FIB-SEMでは,高速かつ広範囲で触媒層を加工するためにはXeプラズマを使用し,ナノ粒子間隙を詳細に観察するためにはGaイオンを使用することが望ましいという結果を得た。TEM観察では,EDSトモグラフィーによる三次元元素分布解析を行い,妥当な構造を再構成することができた。また,触媒層中には凝集体間の空隙によって形成されるマクロ孔が確認されたため,ナノX線CTによる観察を行い,細孔の連通構造と屈曲率の計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触媒層の細孔ネットワーク制御の鍵となるナノ粒子構造の微細制御を達成した。火炎法による微粒子構造の制御性は当初想定していたよりも高く,狙った粒子サイズ・凝集度を持つ目的材料を高い再現性のもとで生産可能となった。また,細孔のネットワーク構造を定量的に評価するための測定および解析手法を確立し,現在種々の材料に適用している。数ヶ月を要すると予想していたSEMおよびCT用のペレットサンプル作製と最適化についても1ヶ月で完了した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,本年度得られたナノ粒子を使用してマクロポーラス構造や凝集構造を有するナノ構造化微粒子を合成し,電池性能と3次元細孔構造を評価する。また,細孔ネットワーク構造の定量化手法の最適化も引き続き実施する。具体的には, (1)合成した粒子の工業利用を考慮して,スケールアップの実績がある火炎合成法を用いた多孔質粒子の合成を行う。また,実際に使用されている手法によって触媒層とデバイスを作製して,材料評価を行う。具体的には,触媒インクを転写する際に行う機械的圧縮操作が触媒層の細孔構造に与える影響を,電池性能と比較しながら評価する。 (2)本研究では,”火炎法による原子スケールでの材料構造制御”・”高温下流域での凝集プロセスによる微粒子ナノ構造制御”・”機械的圧縮後の触媒層構造制御”を一貫して行うことから,マルチスケールでの材料設計指針が必要となる。各スケールに応じた観察手法(TEM・SEM・CT)を用いて構造を定量化し,高耐久・高性能な燃料電池触媒の開発に向けて最適化を行う。特に,二次粒子の間隙で形成される細孔と,二次粒子内部の細孔を分離して議論することを試みる。
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