研究課題/領域番号 |
23K13601
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木村 健太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70965003)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ゼオライト合成 / ゼオライト内包金属微粒子触媒 / 炭化水素改質 / Metal encapsulation / Ethane / Aromatization / dehydrogenation / Platinum-Sliver catalyst |
研究開始時の研究の概要 |
エタンから有用化学物質の低温合成には,エタンからエチレンの熱平衡論的な支配の脱却が重要な課題となる.本研究では,脱水素能を高めたPt-Ag合金微粒子を酸点密度の高いゼオライト内部に配置し,エタンから生成するエチレンを,酸点によりC3,C4オレフィンに迅速に変換する触媒を開発する.さらに,Znを細孔外近傍に担持し,オレフィン類の二量化,環化反応を促進にすることで,芳香族類の合成を目指す.
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研究実績の概要 |
令和5年度(2023年度)は,エタンの脱水素・芳香族化を促進する触媒を創製するために,金属担持シリカゲルを前駆体としてPt@ZSM-5の開発,およびエタンの転換反応を実施した.Ptを液相還元により固定化したコロイダルシリカを前駆体(Pt-SiO2)とし,ゼオライト合成母液とともに水熱合成を施すと,Ptがゼオライト内部に固定化されたPt@ZSM-5の調製に成功した.また,Pt@ZSM-5の合成過程を追跡すると,金属担持シリカゲル(150℃-0h)の状態では,Ptがシリカ内部に固定化されており,水熱合成時間延長に伴ってこのシリカゲル自身がゼオライト化され(150℃-72 h),Pt@ZSM-5が合成されることが明らかとなった.また,TEMにて触媒内のPt粒子を観察すると,前駆体であるPt-SiO2の場合,2~5 nm程度であったのに対し,ゼオライト化した後のPt@ZSM-5においても同程度の粒子分布であることが確認された.また,金属はPtに加え,AgやCuなどでもゼオライト内部に固定化できることが判明した. エタンの転換反応としては,炭素析出性およびPtのシンタリング性を700℃にて触媒性能を評価した.原料ガスはC2H6 : N2 = 11.9 : 80.9,CHSV=3600 ml/(h・g)において反応を実施した.その結果,従来型(含浸担持)のPt/ZSM-5では,Ptがシンタリングし,エタンの転化率は20%程度に留まった.一方,Pt@ZSM-5の場合,エタンの転化率が40%程度まで上昇し,かつ23時間後のPt平均粒子径は3.4 nmと反応前(3.3 nm)とほとんど同じであった..反応後の触媒をNH3-TPDおよびN2吸着測定により分析すると,ゼオライト細孔が閉塞,酸点が炭素により覆われており,酸点の状態を制御することが重要であると明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,エタンからの有用化学物質合成を低温で行うために,超微粒子状態のPtやAgおよびPtAg複合金属微粒子を,耐熱安定性を有する多孔質担体であるMFI型ゼオライトに内包させた触媒を開発する.研究の最終目的は,エタンからのオレフィンおよび芳香族類合成に対し,550℃~700℃の反応条件において優れた熱的安定性および炭素析出抑制能を示す金属微粒子の創製および金属微粒子上で生成されたエチレンを迅速にプロピレン,ブテン,および芳香族類に迅速に変換する触媒プロセスの構築である.以下に令和5年度の進捗状況を列記する. 触媒の開発進捗状況:金属(Pt,Ag,Cu)を担持したコロイダルシリカを金属微粒子およびシリカ源の前駆体とした触媒調製法を開発すると共に,MFI型およびBeta型ゼオライト粒子内へPt微粒子,Ag微粒子,もしくはPt-Ag複合金属微粒子を内包した触媒の開発に成功している.金属担持シリカゲルのゼオライト成長速度を制御するために,ゼオライト合成母液組成(Si/Al比,構造規定剤添加量,溶液pH,水熱合成温度,水熱合成時間)を詳細に検討した結果,Pt担持量は0.1wt%~0.5wt%,Ag担持量は0.1wt%~1 wt%の範囲で微粒子状の金属をゼオライト粒子内に内包させることに成功している. エタンの反応試験進捗状況:上記で調製したPt@ZSM-5を触媒に用い,700℃でのエタンの転換反応を実施し,炭素析出の抑制能とPtのシンタリング抑制能を明らかにした.また,酸点密度が高いゼオライト空間内にPtがあると,従来の含浸担持触媒と比べ,芳香族類の形成に対して有効であることが判明した.
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今後の研究の推進方策 |
I)エチレンの吸脱着制御: エタンからのオレフィン,芳香族を低温にて合成するには,エタン脱水素により生成されたエチレンを迅速に多量化・環化する必要がある.エチレンの吸脱着を制御するために,PtAgおよびPtCu複合金属微粒子をゼオライト内部に固定化した触媒を使用し,700℃でのエタン反応試験を実施する.特に,Pt/Ag(or Cu)比を変更し,エタンの脱水素およびエチレンの転換の制御を図る.また,このときにPt,Ag種の局所構造をXAFSにより分析し,金属状態と反応との関係性を明らかにする. (Ⅱ)エタンからの芳香族低温合成:エタンからエチレンへの脱水素反応は熱力学平衡の観点から,非常に高い反応温度が求められる.これを低温で実現するには,エチレンを迅速に変換する必要があるため,酸点状態の制御を行う.エチレン,オレフィンを重合するブレンステッド酸点とオレフィンを環化させるルイス酸点をZnもしくはGaを導入により制御し,エチレンからの多量化・環化の最適条件の探索を行う.また,MFI型ゼオライト内のAlを一部,ZnやGaに置換し,ルイス酸点の導入方法による触媒性能との関係性を明らかにする. (Ⅲ)触媒耐久性の向上:本反応は,反応性の高いオレフィンや芳香族類が生成されるため,ゼオライト細孔内での閉塞が起こる可能性が高い.そのため,ゼオライト合成時に界面活性剤を投入し,ミクロ孔に加えてメソ孔空間を導入することを試みる.生成物の拡散性を向上することで,細孔内で生じる炭素析出の抑制を図る.
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