研究課題/領域番号 |
23K13614
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
景山 達斗 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「再生毛髪の大量調整革新技術開発」プロジェクト, 研究員(任期有) (40822177)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 毛包 / オルガノイド / 脱毛症 / 白髪 / オキシトシン / 薬剤スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
毛髪は、ヒトの見た目の印象を大きく左右するため、その治療へのニーズは非常に高い。近年、我々は生体外で毛髪を再生できる培養系(毛包オルガノイドと呼ぶ)を開発した。本研究では、毛包オルガノイドを用いて、毛髪疾患の原因遺伝子の探索およびその治療薬の創出を目指す。すなわち、毛包オルガノイドの網羅的siRNAノックダウン実験により、毛髪疾患の原因遺伝子候補を抽出し、この遺伝子を活性化する薬剤をスクリーニングする。本研究により、毛髪疾患に対する新たな創薬ツールが確立され、新薬開発が加速すると期待できる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、毛包オルガノイドを用いて、①毛髪疾患の原因遺伝子を探索する評価系を確立するとともに、②白髪や脱毛症を改善する効果のある薬剤の探索を行った。 ①に関して、siRNA実験に用いる試薬の種類や濃度条件を最適化し、毛包オルガノイドの標的遺伝子を効率よくノックダウンする条件を見出した。この系を用いて、既知の白髪の原因遺伝子(Bcl2,Mitf等)のsiRNA実験を行ったところ、毛包オルガノイドから形成する毛幹の白髪化が確認された。また、脱毛症の原因遺伝子のsiRNA実験では、ヒト細胞を用いて毛包オルガノイドを構築し、標的遺伝子のノックダウンによって形成する毛幹の伸長速度が低下することを見出している。 ②に関して、毛包オルガノイドに白髪改善や育毛効果のある薬剤候補を添加して、薬剤スクリーニングを行った。その結果、3種類の白髪改善に有効な候補物質と4種類の育毛改善に有効な候補物質を見出した。 特筆すべきは、愛情ホルモン “オキシトシン” に育毛効果があることを見出した点である。オキシトシンは出産や授乳期に産生されるホルモンであり、家族とのスキンシップやペットとのふれあいによっても産生されるため愛情ホルモンとも呼ばれる。近年では、オキシトシンがストレスを緩和し精神的な安らぎを与える効果をもち、ストレス関連疾患に対する有効性も報告されている。このオキシトシンを添加した培地で毛包オルガノイドを6日間培養すると、毛包オルガノイドから伸長する毛幹様構造の長さが添加なしのコントロールと比べて有意に増加した。この結果は、オキシトシンが育毛効果を有している可能性を示唆している。今後、in vivo実験による詳細な解析が必要であるが、本研究によりオキシトシンが脱毛症治療の新たな薬の候補となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
育毛剤の候補を探索する中で、愛情ホルモン“オキシトシン”という身近な成分が育毛効果を持つという想定外の発見があった。すでに特許申請を完了し、実用化に向けた研究開発も開始している。化粧品にも含まれるケイヒ酸(シナモンの成分)がオキシトシンのシグナルを活性化して育毛効果を示すことも見出しており、医薬品と化粧品の両視点での応用可能性を検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、siRNAノックダウン実験により毛髪疾患の原因遺伝子を網羅的に探索し、治療ターゲットとなる標的遺伝子を決定する。この標的遺伝子を活性化する薬剤をスクリーニングすることで新たな白髪改善薬および育毛剤の開発を目指す。また、育毛剤の候補として新たに見出したオキシトシンの作用メカニズムやin vivo実験での育毛効果についても検証する。
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