研究課題/領域番号 |
23K13617
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増田 晋也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (80885468)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 配位子―担体間相互作用 / 配位子保護金クラスター / 金クラスター触媒 / カーボン / 電極触媒反応 / 固体触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、精密性、活性および耐久性を兼ね備えた金クラスター触媒の合成を志向し、特定の構成原子数を有する配位子保護金クラスターを出発原料として、一部の配位子のみを選択的に残留させた金クラスターを固体担体上に担持させる。種々の担体上で安定な金クラスターを担持することで、様々な反応における金クラスターと担体の協奏作用による新奇な反応特性の解明という最終目標を達成したい。
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研究実績の概要 |
当該年度は、配位子―カーボン担体間相互作用を利用した触媒合成を行い、電極触媒反応特性の評価を行った。金粒子はCO2電解還元反応において選択性CO合成に適した触媒であり、金ナノ粒子のサイズや配位子の有無によりその選択性が変化することが知られている。そこで、我々が発見した配位子とカーボン担体間の相互作用を利用した金クラスター安定化法により、サイズをAu25に維持したまま配位子残存量を制御することで、配位子の存在がCO選択合成に与える影響を評価した。結果として、配位子を三分の二程除去した触媒ではCOへの選択性が大きく低下した。すなわち、Au25核程度の金クラスターサイズでは、露出金サイトにおいて水素発生反応への選択性が高いことが明らかとなった。これらの結果を基に、配位子が近傍に存在するサイトでCO2還元が選択的に進行すると結論付けた。この際、配位子を残存させていたとしても電極触媒反応中で金クラスターの凝集が一部進行していた。また、汎用的に用いられる配位子で合成した金クラスターを用いると、サイズを維持するためには電極触媒の効率向上に重要な担持量を制限する必要があった。そこで、より強固な相互作用を期待して配位子側鎖に第二世代デンドリマーを有するチオラートを導入した金クラスターを合成した。その結果、高担持量でもサイズを維持したまま金クラスターを安定化することに成功した。露出金クラスターサイトが水素発生反応に有効であるため、配位子を一部除去したサンプルで水素発生反応を行ったところ、配位子の除去に伴い活性が向上し、デンドリマー側鎖の導入により長時間での安定性が向上することを見出した。配位子―カーボン担体間の相互作用を利用する本手法は、カーボン担体上での安定化が難しい金粒子の精密性を高めることで、より精細な解析を可能にできる点で重要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の目的として(i)カーボン担体と配位子間の相互作用を利用した触媒合成、(ii)層状複水酸化物とカルボン酸末端を有する配位子との静電相互作用を利用した触媒合成を掲げていた。(i)については触媒合成の最適化は完了しており、(ii)についても触媒合成手法の最適化はほとんど完了している。現在これらの系を用いて種々の反応系における性能探索を進めている。また、上記に加えてより強固な配位子-担体間相互作用を利用した触媒の合成を進めており、既に耐久性が向上した触媒の合成に成功している。これらの触媒を用いることで、未踏の反応特性の発見を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、配位子保護金クラスターを前駆体として担体と相互作用させ、一部の配位子のみを除去する熱処理条件の探索を進め、最適条件探索はおおむね完了した。今後は得られた触媒を用いた反応特性の評価を目指す。金クラスター触媒は不安定であるため、これまで過酷な条件下での反応特性はあまり評価できていなかった。今回触媒の耐久性をある程度向上できたため、過酷な反応条件を必要とする反応に応用することで金クラスター触媒が優位に働く反応系の開拓を行う。
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