研究課題/領域番号 |
23K13618
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長川 遥輝 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (50968170)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 光触媒 / 電子トラップ / ナノ粒子 / 水素製造 / 金属ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
光触媒反応において、結晶欠陥に由来する電子トラップは活性に大きな影響を与える。これまでに、電子トラップのエネルギー準位に関する知見は得られているが、その空間的な分布は未だ解明されていない部分が多い。本研究では、電子トラップに捕捉された電子による金属ナノ粒子の担持法を確立し、その析出部位を調べることで、光触媒粒子上における電子トラップの空間的な分布を明らかにする。さらには、本手法によって担持した金属ナノ粒子を助触媒として活用し、高効率の光触媒反応の達成を目指す。最終的には、電子トラップを介した電荷移動の機構解明を行い、光触媒材料やその他の光機能材料に対する新たな設計方針の確立を目標とする。
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研究実績の概要 |
初年度の研究では、光触媒の欠陥部に捕捉された電子による、金属ナノ粒子の析出プロセスに関する研究を行った。具体的には、可視光応答性光触媒の中でも研究例の多い、硫化カドミウム(CdS)をモデル物質として検討した。CdSは硫化物イオン欠陥部が電子を捕捉する電子トラップとして働く。本研究では、電子をトラップしたCdSの分散水溶液に金属イオンを添加すると、トラップされた電子がイオンを還元し、金属ナノ粒子が析出することを見出した(電子トラップ法)。この手法を用いると、従来広く用いられていた光析出法よりも高い分散性で金属ナノ粒子を担持できることが明らかになった。特に、水素生成反応に有効な助触媒である白金(Pt)ナノ粒子を析出させると、従来よりも高い効率で光触媒反応による水素生成が進行した。 また、光析出法と電子トラップ法では、金属ナノ粒子の析出における、結晶面選択性が異なることも明らかになった。光析出法では、表面エネルギーの高い結晶面で析出する傾向が示された一方で、電子トラップ法では、粒子全体で析出した。この結果から、CdS光触媒では、硫化物イオン欠陥が粒子全体に分布していると考察された。 さらに、CdS光触媒にあらかじめ欠陥を導入し、電子トラップ法で担持できる金属量を制御する手法を検討した。欠陥導入法としては、加熱、加圧、アルカリ処理を試行し、いずれの方法でも硫化物イオン欠陥量が増加することがわかった。欠陥を導入したCdSに対して電子トラップ法を用いたPt助触媒の担持を行うと、未処理のCdSに比べて析出量が増大した。 これらの知見は、欠陥を活用した新しい光触媒合成の可能性を示しており、既存光触媒の高活性化や、新規光触媒群の創出が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的である、電子トラップの空間的分布の解明および、欠陥を活用した光触媒合成を5年計画の初年度で達成し、計画以上に進展していると判断した。しかしながら、現状では研究対象がCdS光触媒に限られており、より多様な材料への展開を予定している。加えて、電子トラップが関連する電荷移動プロセスについては、未解明の部分が多く、今後の更なる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は開発した電子トラップ法や、欠陥評価手法をCdS以外の光触媒にも適用し、高活性を持つ光触媒の開発を進める。また、開発した光触媒について、反応中もしくは反応後の特性評価を行い、電子トラップが関与する電荷移動プロセスの知見を得ることを目指す。
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