研究課題/領域番号 |
23K13629
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大曲 駿 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20836473)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ペロブスカイトナノ結晶 / 蛍光顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 発光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ハロゲン化鉛Perovskiteナノ結晶APbX3(A+=Cs+, CH(NH2)2+, CH3NH3+、X-=Cl-, Br-, I-)の溶液中の挙動を、単一ナノ結晶レベルで明らかにする。その為に、①9種類のハロゲン化鉛Perovskiteナノ結晶の合成とその最適化、②発光スペクトルや発光量子収率などのマクロ物性の測定、③蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡のハイブリッド顕微鏡を用いたPerovskiteナノ結晶の溶液中のミクロ物性の測定とその変化の3点を重点的に実施する。得られた結果を基に、活性溶媒を加えた際にナノ結晶がどのような挙動をしているかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究ではハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ結晶の溶液中の挙動を単一レベルで観察し、そのメカニズムを解明することである。ただし、これまでの様々な報告によると、ハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ結晶をhot-injection法で合成する場合、その物性や安定性は様々な合成条件、精製条件、および合成後の処理によって左右されることが報告されている。実際、過去の報告通りの合成条件で合成を行ってもその物性は不安定であった。本研究を遂行する前提として、ハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ結晶の合成が確立している必要がある。そこで、今年度では合成条件、精製条件、後処理条件、保存条件を変化させ、それらの条件と得られたナノ結晶の物性の関係性の究明を試みた。 その結果、合成条件を同一にしても合成されたペロブスカイトナノ結晶の発光物性と長期的な安定性が共に不安定であることが明らかとなった。混合する表面配位子(ペロブスカイトナノ結晶の表面の化学的安定性の保持とナノ結晶同士の分散性を高めるためのもの)の量もこの不安定性に関与しないことが分かった。また、後処理で行う余分な表面配位子の添加は高い発光効率を確保する上で重要であることが明らかとなったが、長期的な安定性にはほとんど影響はなかった。さらに、単一ナノ結晶の実験により、「ブリンキング」と呼ばれるONとOFFを繰り返す現象を観察したところ、合成条件はあまり影響がなく、後処理における余分な表面配位子の添加はブリンキングのOFF時間を延ばす傾向が見られた。特に後者は重要な結果であり、ブリンキングが起こることは発光効率を考慮すると望ましくないと考えられてきたが、表面配位子が発光効率を増大させているのと同時にOFF時間も長くなっていることが明らかとなった。つまり、表面配位子はON時間の時の強度を増幅しているのであって、OFF時間を抑制しているわけではないことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば既に溶液中の挙動を検討するはずであるが、その実験を遂行するための前提条件として安定的に再現性良くペロブスカイトナノ結晶を合成する必要がある。この条件を明らかにするための実験が生じたたため、進行がやや遅れている。一方で、この条件を明らかにし、具体的に何がどのように影響するかを明らかにすることは有意義である。
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今後の研究の推進方策 |
以上の研究成果より、合成条件や精製条件などは長期的な化学的安定性に大きく影響しないことが明らかとなり、また後処理がブリンキングをむしろ引き起こしていることが分かった。できる限り安定的に同一の発光物性・安定性のペロブスカイトナノ結晶を合成するために、まず結晶サイズがより均一になることが報告されている余分なハロゲン化亜鉛の添加を検討した方法で合成を行い、不均一性を払拭する。その上で、溶液中の挙動を観察する実験に移行する。
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