研究課題/領域番号 |
23K13633
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鈴木 弘朗 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (20880553)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 二次元半導体 / 遷移金属カルコゲナイド / 化学気相成長法 / マイクロリアクタ / その場観測 / 気相‐液相-固相成長 / 光電子物性 / 光電子デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
半導体二次元材料の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を閉じ込め空間を反応場として合成する手法を研究する.申請者らはこれまで,基板を積層したマイクロリアクタ内で高品質な大面積TMDCの合成に成功した.本研究では,マイクロリアクタの閉じ込め空間における金属塩液体,原料拡散の動的振る舞いや,結晶の成長過程の理解を通して,核生成や結晶成長を制御する技術を開発し,これまで困難であった超大面積・単層TMDC単結晶の実現を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は主に,マイクロリアクタ中の単層WS2のその場観測に取り組んだ.その場観測のために新たなCVD装置を立ち上げた.CVD装置に長作動距離のズーム顕微鏡を取り付けることで,その場観測を可能にした.加熱方式としては,従来研究と同様のコールドウォール型にするために,赤外加熱方式を取り入れた.小型の赤外加熱炉を採用することで,高温下でもチャンバー内部の観察を容易にした.また,真空プロセスを採用し,硫黄原料として窒素でバブリングした有機硫黄液体を用いることで,ガス流による外乱を抑制し,従来の大気圧CVDに比べ,その場観察を容易にした.基板を積層したマイクロリアクタ内部を観測するために,アルカリ金属塩原料をスピンコートしたシリコン基板上に透明なサファイア基板を乗せ,内部をその場観測可能なマイクロリアクタを構築した.この合成システムを用いることで,マイクロリアクタ中で単層WS2が成長する様子をその場観測することに成功した.原料液滴から固相のWS2が析出成長する気相-液相-固相(VLS)成長における,複数の異なる成長モードの観測に成功した.①WS2結晶が三角形状に大きくなる一般的な成長様式,②液滴から核発生しエッジと液滴が動くことで結晶成長する様式,③粒子状液滴が動き回ることで線状に結晶成長する様式,などを観測することに成功した.また,①の成長モードにおいて,結晶成長速度を同定し,単層WS2の成長速度が典型的な一次反応モデルで表わせることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
結晶成長のその場観測は本研究の主軸であったが,本年度はその場観測装置の立ち上げと結晶成長のその場観測に成功した.さらに,液滴の動的振る舞いと結晶成長が関わる,様々な結晶成長モードを明瞭に観測することに成功した.これらは当初計画に期待していたよりも大きな成果であり,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後はその場観測合成を軸にして,原料液滴の動的振る舞いと結晶成長の関係性を解明していく.また,より良い観測結果を得るために,外部の振動を抑制する装置環境の構築を試みる.様々な合成条件下で観測を行い,マイクロリアクタ内の結晶成長の全体像を明らかにしていく.
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