研究課題/領域番号 |
23K13638
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
矢野 雅大 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30783790)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | STM / 電気化学 / 酸素還元 / グラフェン / ナノリボン / 低次元物質 / 触媒 / M-N-C / グラフェンナノリボン / ナノ構造 |
研究開始時の研究の概要 |
二酸化炭素の実質排出量をゼロにするため、白金をはじめとする希少元素の代替触媒開発が必要である。M-N-C構造が有望だが、既存の作製手法では反応効率が低い。本研究では、グラフェンナノリボンの合成手法を用いることでM-N-C構造を高密度に持つ触媒作製技術を確立することを目的としている。この技術の達成により、効率的な触媒開発プロセスが構築され、既存触媒の5倍以上に高性能な代替触媒が創出され、持続可能な社会の実現に貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、M-N-C構造による触媒を原子レベルで制御可能な作製手法の確立を目的としている。本年度はAu(111)基板上に6,11-Dibromo-1,2,3,4-tetraphenyltriphenylene(DBTPTP)及び、これに2つの窒素原子を置換した分子(N-DBTPTP)を蒸着し、400℃で加熱することでグラフェンナノリボン(GNR)及び窒素ドープGNR(N-GNR)を合成した。 GNR及びN-GNRの構造評価は走査型トンネル顕微鏡を用いて行い、どちらもほぼ同様のジグザグ状コントラストを得た。SPring-8のBL23においてX線光電子分光を用いてN-GNR中のN量を評価し、N-GNR中のNとCの比率はN-DBTPTPと一致していることを確認した。これらから、GNRとN-GNRは窒素ドープ以外は同様の形状を持っていることが示唆される。なお、多くのN原子は高い触媒活性を持つことが期待されるピリジン型構造をとっているが、一部グラファイト型構造をとるNが存在することが明らかになった。これは、合成時の加熱温度が高いために隣り合うN-GNR同士の重合が起きている可能性を示唆している。 Au(111)上に作製したGNR、N-GNRの酸素還元活性を電気化学計測により評価した。GNRのボルタモグラムの形状はNドープの有無にかかわらずAu(111)とよく似ており、GNR間に露出したAu(111)の影響が大きいことが予想される。一方、反応過電圧はNドープによって改善しており、Au(111)表面においてGNRを基にした触媒の性能評価が可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Au(111)基板上に6,11-Dibromo-1,2,3,4-tetraphenyltriphenylene(DBTPTP)及び、これに2つの窒素原子を置換した分子(N-DBTPTP)を蒸着し、400℃で加熱することでグラフェンナノリボン(GNR)及び窒素ドープGNR(N-GNR)を合成に成功し、これらの触媒活性の差異を確認できたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、GNRの合成温度や密度を制御してN-GNR中の全てのNがピリジン型の構造をとる条件を明らかにする。次に、作製したN-GNRへ金属原子を真空中で蒸着することでM-N-C構造を形成し、その構造、電子状態、触媒性能をSTM、SPring-8でのSRXPS、電気化学測定により明らかにする。また、CO2還元反応では反応生成物を産業利用することが見込まれるため、四重極質量分析計を用いて反応生成ガスの成分を分析する。これらの結果を基に良好な触媒反応を示すM-N-C構造の作製指針を提案し、新奇触媒創成の礎を築く。
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