研究課題/領域番号 |
23K13649
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 和也 京都大学, 工学研究科, 助教 (40781802)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マイクロ流体デバイス / 脈管形成 / 血管内皮細胞 / 数理モデル / シミュレーション / 血管新生 / 血管内皮 / 自己組織化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、脈管形成と血管新生という2つの形成過程の理解に基づき、生体内で見られる血管構造を生体外で再現する方法を確立する。 細胞は自律的に他の細胞や環境と相互作用して活動するため、周囲の微小環境に対する応答を動的なプロセスとして理解し、適切な条件を設定することが必要である。ある時点で発現している遺伝子やたんぱく質のリストを詳しく知るだけでは高度な構造を実現するのに十分ではなく、望みの状態に誘導するためには機械的な刺激や成長因子などの生理的シグナルなど、個々の要素を必要に応じて制御することが必要である。血管形成の時空間的なモデルと各要素の制御技術に基づいて実際に複雑な血管構造を再現する
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研究実績の概要 |
2023年度ではタイムラプス観察による血管網形成過程の時系列的な観察および結果の解析に基づいたシミュレーションと実験との対応付けを行うとともに、3Dプリンタを利用したマイクロ流体デバイスの作成手法を確立した。まず、マイクロ流体デバイスの構造と撮影方法を検討することで、脈管形成過程の時系列的な観察を実現した。初期の血管網構造が形成される24時間の間顕微鏡ステージ上で培養を続け、形態の変化を観察した。 得られた観察結果から画像処理手法を活用し、血管網の形態などに関する定量的な情報を取得した。これらの手法に基づいて、血管網形成を促進する因子として知られているVEGFやbFGFが血管網形成に与える影響を評価した。さらに、時系列的な観察データに基づいて、細胞からの突起形成と細胞の接触・結合によって駆動される脈管形成の過程を表す数理モデルを構築した。このモデルを利用してデバイスへの細胞導入からの時間発展を計算した結果、得られた形状は脈管形成実験で観察される形状に定性的に類似していることが分かった。 また、3Dプリンタを利用して作成したモールドによるPDMSソフトリソグラフィ手法を確立した。血管網形成実験に必要な、表面張力を用いたデバイス内でのゲル位置のパターニングが可能であることを確認し、作成したデバイス内で脈管形成を実現した。3Dプリンタを活用することで、従来の手法に比較してより複雑な三次元的な構造を短時間で形成し、血管網形成に応用できることが分かった。 これらの結果について、The 27th International Conference onMiniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (micro TAS 2023) など合計6件の国際学会・国内学会で発表した。関連する内容についての査読論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り3Dプリンタを用いてモールドを作成し、従来のソフトリソグラフィに基づいたファブリケーション手法に比較してより複雑な3次元的形状を持ったマイクロ流体デバイスを形成できることを確認した。また、作成したデバイスに血管内皮細胞を導入して血管網を形成できることも確認した。検討を進めている時系列的な血管網形状の観察および数理的モデリングと合わせて、血管新生の制御を行うための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
脈管形成モデルを用いて得られた結果に基づいて、一定の構造を形成した血管網からの血管新生に関する検討を進める。まず、血管網に流れを与えることで血管網の形状や細胞種とせ血管新生を促進するせん断応力の関係を理解するため、血管形態の変化を連続的に観察するとともに、得られた血管網形状に対して数値シミュレーションを行いせん断応力の分布を調査する。続いて、VEGFをはじめとするシグナル分子が血管新生に与える定量的な影響についても、規定された環境下で各分子を調べる。また、血管の構造を支持・保護する周皮細胞の存在とせん断応力、血管新生の関係についても調査する。 さらに、血管新生と関連する各要素の定量的データに基づいて血管新生をモデル化し、実験条件に対応した血管新生の頻度と形成される血管形態の予測手法を開発する。予測を利用してデバイス形状を最適化し、3Dプリンタを活用してデバイスの評価に必要な時間を短縮することで脈管形成と血管新生により所望の血管形態の実現を目指す。 さらに、血管網形態の制御に基づいて、複数の形態を設定したデバイスでスフェロイドやオルガノイドをともに培養し、培養組織の血管化に適した血管網形態を見出す。最終的に培養組織の血管化を最適化し、栄養・酸素供給の改善による生体外組織培養の長期安定化、分化状態の促進を目指す。
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