研究課題/領域番号 |
23K13659
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
崔 旭鎮 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (70916147)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | キラリティー / スピントロニクス / CISS |
研究開始時の研究の概要 |
キラリティーを有する有機材料によって電子のスピンが選択されるCISS現象は、まだその起源がはっきり分かっておりません。どの様な分子構造がより強いCISS効果を発揮するかを知るために、本研究ではマイクロ波共振法を用いて、キラル単結晶材料におけるスピン偏極率の非接触評価を行います。本研究の遂行により、分子構造に基づくスピン物性の理解が深ま り、新たなスピントロニクス材料開発に繋がることが期待できます。
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研究実績の概要 |
物質のキラリティーが電子のスピン方向を決定するChirality Induced Spin Selectivity (CISS)効果に分子構造が及ぼす影響を評価するために、マイクロ波を用いた非接触測定法の開発を行っている。その対象としてキラル側鎖を有するDNTTを用いた。DNTTはπ共役を有する中心骨格はヘリンボーン構造で2次元伝導パスを形成し、層間にキラリティーを有するアルキル側鎖が位置する構造を取る。従って、このキラルDNTTを通る電荷キャリアは側鎖によるキラルな場の効果を受けると予想される。 キラルDNTTを対象に本研究室で開発した非接触伝導度測定法であるFI-TRMC測定を行った。電荷注入電として極強磁性体であるNi電極を用い、0.3 T程度の磁場存在下で、異なるゲート電圧を印加しながら、反射マイクロ波の変化を測定し、伝導率の変化を見積もった。その結果、磁場存在下よりも磁場を印加した状態でのキャリア移動度が高いことが分かった。一方、キラルではないアルキル側鎖を有するDNTTを使った場合は、磁場による差が見えなかった。また、キラルDNTTであっても、強磁性体ではない金電極を使った場合でも、磁場による差は見えなかった。 しかしながら、側鎖のキラリティーが違うR-DNTTとS-DNTTが同じ挙動を示すことが見られ、既知のCISS効果とは異なる現象であることが示唆されている。CISSはキラリティーを有する分子を電子が通る際に、電子のスピンに遷移確率、もしくは散乱確立が異なる現象であるが、今回観測された結果は強磁性体とキラルな分子軌道の間に特別な相互作用が存在していることを示唆する結果であり、電子のスピンと特定のキラリティー間に選択的な相互作用が存在している様には思えない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非接触測定法であるFI-TRMCよりキラルな分子と強磁性体電極より注入されたスピン偏極電子の間に特別な相互作用が存在することは見出されたが、既知のCISS効果とは異なる現象であると思われる。従って、この結果は当初目標にしていたCISS効果の精密測定に符合する結果では無く、別の新たな発見につながる可能性は存在するものの、当初の目的からすると進捗状況は遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、得られた測定結果よりキラルな分子のスピン別分子軌道と強磁性体電極の多数スピンバンドの間に特殊な相互作用が存在する可能性が見出されている。この結果について引き続き研究を進めると同時に当初の目標であったCISS効果の非接触測定に向けて、ESR測定及びナノダイヤモンドを用いたODMR測定を行う予定である。
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