研究課題/領域番号 |
23K13664
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
志賀 大亮 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00909103)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 強相関酸化物 / 酸化物ナノ構造 / 放射光電子分光 / 薄膜・表面界面物性 / 酸化物エレクトロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
室温付近で急激な一次相転移を示すバナジウム酸化物は、モットトランジスタにおけるチャネル材料の有力候補である。しかし、素子動作時におけるチャネル界面の挙動については未だよく分かっておらず、実用化には至っていない。 本研究では、バナジウム酸化物の薄膜多層構造を設計することでヘテロ界面に電子相転移を誘起し、それ伴う電子構造変化を放射光電子分光により直接決定する。これにより、動作の物理的機構を解明するとともにデバイスの設計指針を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、モットトランジスタデバイスを模したVO2多層ヘテロ構造に誘起される特異なモット転移に伴う電子・結晶構造変化とその空間分布を放射光電子分光の特長を用いて選択的に決定し、得られた知見に基づきデバイス動作の物理的機構を解明することである。本質的な情報を得るため、「その場放射光電子分光+レーザー分子線エピタキシ」複合装置を用いて実験の全行程を超高真空下で実施した。 当該年度はその一環として、従来のVO2トランジスタ構造[VO2(001)R多層構造]とは異なる面方位をもつVO2(110)R二層構造を作製し、その電気輸送特性が両者で本質的に異なることを見いだした。この起源に迫るため、表面敏感なその場軟X線光電子分光の特長を用いて二層構造における上部(天地反転すれば下部)VO2チャネル層の電子構造変化を選択的に直接観測した結果、V4+一次元鎖(V4+-V4+二量化軸)が界面と平行な(110)Rヘテロ構造では、垂直な従来型(001)Rヘテロ構造とは対照的に、結晶構造変化(パイエルス転移)が界面を介して伝播していないことが示唆された。このことは、VO2 チャネル層界面の方位設計によって、結晶構造変化の伝播が制御可能となり、純粋なモット転移のみを単離すること(電子・結晶構造相転移の独立制御)が可能であことを示している。この知見に基づき今後も引き続き、各層が異なる電子相で構成される多層構造を舞台に、その界面に生成される界面エネルギー、各層が内包する電子・結晶構造・スピン状態の自由度に由来するエントロピー、サイズ効果、の3点を局所的な化学ドープを用いて最適化する。これを順次ナノテラスなどでの先端分光を駆使した電子状態調査に投入し、チャネル層設計にフィードバックする。これにより、結晶格子変形を伴わずして巨大かつ急峻なオンオフスイッチを引き起こすトランジスタチャネル動作の実証を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の主軸は、化学ドープしたVO2薄膜ヘテロ構造の調製と、チャネル界面隣接領域における電子構造変化の放射光局所解析である。当該年度では、1)純粋なVO2(110)R層と相転移温度を抑制した電子ドープW6+:VO2(110)R層から構成される(110)Rヘテロ界面を作製し、輸送特性評価と放射光解析に基づき、ヘテロ界面が誘起する電子相転移現象に伴う電子構造変化について明らかにした。現象をより体系的に理解し成果をまとめるためには、ヘテロ構造におけるサイズ効果、及びサブミクロンスケールの過渡的な電子相分離現象の可能性について追加で検証する必要がある。今後は、サイズの異なる(110)R二層構造を作製し、放射光を活用した顕微分光解析に順次投入し、その電子相変化の様式を詳らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
1)(001)R多層構造における各層のエントロピー(電子・結晶構造・スピン状態が寄与)を制御し、界面誘起電子相転移の変化を調べる。具体的には、新たに挿入する層の候補として、通常の絶縁体相とは異なるV4+二量化特性を示す(つまり、ことなるエントロピーをもつ)ホールドープCr:VO2単結晶薄膜を選択する。二層構造の電気輸送特性評価に基づき、エントロピー制御による新奇電子・構造相転移パスを模索する。2)Cr:VO2/VO2二層構造に発現する界面誘起電子相転移の起源を調べるために放射光電子分光を行う。以上の実験から得られた知見に基づき、最適なチャネル層界面を設計し、電子・結晶構造相転移の独立動作を実証する。
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