研究課題/領域番号 |
23K13665
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 孝太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (20808315)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 地球外有機分子 / 高分解能観察 / 構造同定 |
研究開始時の研究の概要 |
地球外に存在する有機分子は、地球上に存在する生命などの様々な物質の起源となった可能性がある。そのため、宇宙化学分野では地球外有機分子の検出・構造同定が行われてきた。多様な分子の存在が確認され、どのような環境でどのような化学反応を経験してきたかなどがこれまでに議論されてきた。しかし、宇宙化学の従来の手法では原理的に検出や構造同定が困難な分子が存在すると考えられる。そこで、本研究では原子間力顕微鏡を用いて、地球外有機分子のうち、特に多環芳香族炭化水素に注目して、その構造を実空間高分解能観察によって同定し、分子進化の過程を探る。
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研究実績の概要 |
地球外有機分子は地球上の様々な物質の起源となった可能性などが示唆されているため、宇宙化学では様々な手法を用いてその構造の同定が行われてきた。しかし、従来の手法では測定原理上検出や同定が困難な有機分子が存在することが予想される。本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)による高分解能観察を用いて、地球外に由来する有機分子のうち、特に従来手法では同定が困難であった分子の構造を同定することを目的とする。 本年度は、小惑星リュウグウから持ち帰られた試料から抽出された有機物の観察を行った。多環芳香族有機分子が多く含まれるとされるジクロロメタン可溶有機物(DCM SOM)とメタノール可溶有機物(MeOH SOM)、および構造が複雑なため従来手法での同定が難しく、AFMによる測定が有効と考えられる溶媒不溶有機物(IOM)の3種類の有機物について測定を行った。各有機物成分を超高真空下で清浄なCu(111)基板上に蒸着し、高分解能観察を行った。DCM SOMでは、先行研究で存在が予想される6員環4つ程度の小さな分子から、これまでに予想されていなかった巨大な分子や5員環や7員環などの構造を含んだ分子など多様な分子の存在が確認できた。一方で、MeOH SOMおよびIOMでは不純物と思しきものが支配的に吸着し、明確に有機分子と判別できるものは見つからなかった。 また、本研究は多くの分子を測定して統計的な議論を行う必要があるが、使用中のAFMは測定感度の問題で時間をかけて測定を行う必要がある。より高効率な測定を行うために、高感度AFMの整備も並行して行った。超高真空の立ち上げ、ノイズ対策などの調整を経て動作テストを行い、液体ヘリウム温度において原子分解能を達成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はリュウグウ試料の研究公募に採択され、その測定を優先して行った。貴重な試料であることから慎重に測定を行ったため、予定よりも長期間を費やしたが、これまでに予想されていなかった多様な分子の存在を確認できた。今後、比較のための隕石試料の行い、進捗次第では測定試料の数を減らす必要があるが、当初の目的を達成するには問題ない。 また、高感度AFMの調整も進んでおり、液体ヘリウム温度での原子分解能が達成できた。 以上から、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
隕石から抽出された有機物の測定を行う。リュウグウと置かれていた環境が類似していると考えられているOrgueil隕石およびこれまでに多くの研究がなされてきたMurchison隕石の測定を予定しているが、進捗次第ではOrguieil隕石のみ測定を行う。リュウグウと隕石からの抽出試料から得られた結果を比較し、炭素環の数や6員環以外の環の存在、側鎖といった構造の特徴について類似点や相違点を比較する。
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