研究課題/領域番号 |
23K13668
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宇佐美 潤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80964866)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 強誘電 / 電気熱量効果 / 焦電効果 / 冷却 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、 IT化に伴うコンピューターの廃熱に対し、回路組み込み型の冷却技術として、10 nm厚以下でも強誘電になる薄膜HfO2の電気熱量効果(ECE)に着目する。無害、半導体プロセスと相性が良く、室温を含む広い温度範囲で大きな冷却性能が示唆され、高効率な回路組み込み型冷却技術への応用が期待される。 薄膜は熱容量が小さく基板の影響も無視できず、直接熱測定がほとんどなく正確な熱特性がわかっていない。本研究では、1交流電場、2パルスレーザー光による直接的な ECE、焦電、比熱測定から強誘電薄膜の熱特性を解明し、省電力な冷却技術創出への展開と、新しい側面からの強誘電特性の知見の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、強誘電薄膜の焦電効果、電気熱量効果、その他熱的特性の直接測定により、応用化に向けた強誘電薄膜の特性の解明を目指している、今年度は、強誘電薄膜チタン酸ジルコン酸(PZT)試料を用いて、焦電効果及び電気熱量効果の直接測定系の開発と、強誘電薄膜試料の準備を進めた。 まず、直接測定では、先行研究を参考にフォトリソグラフィーと微細加工によって、薄膜上に電気絶縁膜を介して成膜した金属薄膜を温度計兼ヒーターとして利用できる素子を開発した。本素子の予備測定として、3ω法による熱伝導度測定を行い、Siやガラス、またPZTにおいて文献値と同程度の値が得られた。それを元に、交流ジュール熱あるいは交流電場による温度変化をロックインアンプを用いて正確に測定し、焦電効果(1 Hz~50 kHz)と電気熱量効果(500 Hz~200 kHz)の測定を行った。精密な係数の決定に必要な熱分布に関する評価を現在進めている。 次に試料については、現在の測定系の開発では、強誘電PZT試料を用いている。その他にもALDで成膜を行った10 nm厚の強誘電HfO2系薄膜も準備しており、来年度での評価を進める。 また、当初の計画にあったパルスレーザー光サーモリフレクタンスによる比熱測定については、基板となるノンドープSi基板の測定を実施した。文献と同程度の熱拡散係数が得られた。電極を含む複雑な構成での測定が難しく、上記3ω法による熱伝導と比熱の測定についても検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
焦電、電気熱量効果測定をPZT試料を用いて実施することができた。熱分布の詳細については来年度引き続き考察を行う必要があるものの、素子作成、測定系についてはノウハウができ、来年度さまざまな試料を用いてその物性評価を行なっていく。すでにいくつかの試料で予備測定を行なっており、電気特性などと合わせて考察を進める。また、当初予定にはなく検討項目にあった熱伝導測定については、同様の素子を用いて、3ω法を実施することで測定できることがわかった。サーモリフレクタンス測定はバックグラウンドとなる基板の評価を完了している。上記に記載のPZTでの焦電・電気熱量効果測定において興味深い結果が得られているため、そちらを優先している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずは焦電・電気熱量効果測定時の熱・温度分布を解析的に明らかにし、評価手法を確立する。素子、測定については確立しており、本技術を適用して、様々な強誘電薄膜の評価を行なっていく。PZT試料において、いくつかすでに興味深い結果が得られているため、HfO2系の前にそちらを重点的に研究を行い、順次HfO2系の測定も進めていく。特に今回開発した焦電測定では、比較的高速かつ、従来の電気的な測定ではできなかった電場印加なしでの測定が実施できるため経時変化などを非干渉で評価することを考えている。
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