研究課題/領域番号 |
23K13676
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
相川 洋平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80804616)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 光コンピューティング / 光信号処理 / 光デバイス / デコーダ |
研究開始時の研究の概要 |
現在,プロセッサの微細化に伴ってCMOS技術における処理遅延が問題となっている.代替技術として光信号処理が注目されているが,非線形現象を利用することから素子長(処理遅延)ないし電力が大きくなる傾向があった.これに対して,代表研究者は線形的な光学現象からなる信号処理技術を提案するとともに世界に先駆けて動作実証に成功してきた.本技術は低遅延/低電力を両立できることからCMOS技術の代替となる可能性をもつ.そこで,プロセッサにおけるデコーダ機能に着目し,当該機能を本技術にて代替する研究を立案した.本研究が新しいコンピューティング基盤における要素技術になるものと期待している.
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研究実績の概要 |
本研究は,線形的な光の干渉を用いて高度な信号処理の実現を目指すものである.とくに,プロセッサの主要機能であるデコーダに着目し,当該機能の光領域での代替に取り組んでいる.本年度においてはデコーダ動作の実証およびその集積デバイス化に取り組んだ. はじめに,細線導波路からなるデコーダを提案するとともに,動作要求条件の導出に着手した.信号光とプローブ光の強度比により性能が変化することが分かり,強度比が等しい際に7.8dBの消光比が得られることを明らかにした.つづいて,得られた知見に基づいて当該機能の集積デバイス化に取り組んだ.時系列信号に対してデコーダ動作を行うデバイスとして,マッハツェンダ干渉計が縦列に接続された構成をシリコン細線導波路によって設計した.なお,当該デバイスを用いてデコーダ動作の実証に取り組んだ.10 GbaudのBPSK信号をデバイスに入力することで,対象符号においてのみ出力がON状態となり,異なる符号ではOFF状態として出力されることを確認した.なお,位相バイアスを変更することで,異なる符号に対しても同様に動作することが分かった.これはデコーダ動作そのものであることから,光処理でのデコーダ動作の実証に成功することができた. くわえて,デコーダデバイスの更なる集積化にも取り組んだ.マルチモード干渉計における入出力間の位相関係を利用することでデコーダ動作を実現できることを明らかにした.また,シリコン導波路を用いてマルチモード干渉計を実装し,時間変調されていない信号光を用いてデコーダ動作の実証に成功した.当該デバイスは,上記のマッハツェンダ干渉計からなるデコーダと比較して1/100倍のサイズであり,その処理遅延および消費電力は他の研究成果と比較して最も優れた性能を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の取り組みにおいて当初予定していた研究項目をすべて達成することができた. はじめに,命令デコーダを提案するとともにその動作条件を明確化した.つづいて,当該機能をSOIプラットフォーム上に実装するとともにデコーダ動作の実証に成功した.さらに,マルチモード干渉計を用いることでデコーダ機能を1/100に高度集積できることを明らかにするとともに,デバイスを作製し定常光を用いてデコーダ動作の実証に成功している.このとき,当該デバイスにおける処理遅延および消費電力は280fsおよび1.6fJ/bitであった.これは,2024年時点において他の研究成果と比較して最も優れた値であった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の目標を超えた内容に取り組んでいく. 具体的には,提案するデコーダにおける性能向上に取り組む.現在,デコーダにおける消光比は7dB程度であって決して高くない.そこで,プローブ光を新たにデバイスへ追加することで消光比の向上を図る.これにより,信号パターンに依存しないプローブ光の条件やそれによって向上される消光比の上限などを明らかにしていく.さらに,デコーダ動作の機能拡張にも取り組んでいく.例えば,論理反転したデコーダの実現や,デコーダ動作を応用することで実現可能な他の組み合わせ論理回路についてその実現可能性を追求していく.
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