研究課題/領域番号 |
23K13688
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
玉置 真悟 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10823396)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 中性子 / スペクトロメーター / BNCT / アンフォールディング / モンテカルロシミュレーション / 中性子スペクトロメータ |
研究開始時の研究の概要 |
BNCTにおいて加速器を利用した中性子源の開発が現在最も重要な課題である。現状ではBNCT用加速器中性子源は出力が小さく中性子発生量が少ないため、装置の中性子場特性をBNCTに最適化することが困難であることから、BNCTに不要な高速中性子等が混入し、かつエネルギー分布が照射角度ごとに異なる複雑な分布となる。 そこで本研究では、BNCTによる治療の効果と患者に与えられる線量を正確に評価するため、照射中性子場の角度・エネルギー二重微分中性子スペクトルの測定可能性を検討し、中性子場特性の正確・詳細な計測を行うことで、BNCT治療時の患者に対する被ばく線量を正確に評価する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、BNCT用加速器中性子源から照射される“角度・エネルギー二重微分中性子スペクトル”の測定手法を確立し、患者に照射される線量を正確に評価することである。 申請者はこの問題を解決するため、液体減速型中性子スペクトロメーターという計測器の開発を進めてきたが、先行研究で開発した装置はコリメータを貫通する漏れ中性子の影響により、特に高エネルギーの中性子を適切に計測することが困難となる問題があった。 2023年度はこの問題を解決するため、特に検出器角度を変更した時に側面から入射する中性子の影響を低減するための検出器再設計を行った。検出器設計においてはMCNP6を用いたシミュレーションにより、検出器応答関数を評価した。本研究では先行研究で設計された検出器の外側部分をポリエチレンから鉄の層に変えることで高速中性子を遮蔽を試みた。この厚さを最大5 cmまでの範囲で変化させ、それぞれの設計について応答関数を計算した。次に設計した装置を用いて熱外中性子場の中性子エネルギースペクトル測定シミュレーションをそれぞれの検出器設計について行い、その結果を比較することでスペクトロメーターとしての性能とコリメータを貫通する高速中性子による影響を評価した。 結果としては検討した設計案では鉄の厚さ5 cmの結果が最も良い結果を示し、0度方向で測定した結果については熱外中性子については測定シミュレーションの結果とモンテカルロシミュレーションの結果がおおよそ一致したが、一方で1MeV以上の高速中性子が測定シミュレーションにおいては過大評価される問題が見られた。またこの問題は測定確度が大きくなるごとに大きくなり、側面から入射する高エネルギーの漏れ中性子を十分に遮蔽するには設計の改良が不十分であり、漏れ中性子をより強力に遮蔽する工夫を要することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は(1)液体減速型中性子スペクトロメーターの設計改良、(2)角度エネルギー二重微分中性子スペクトル測定のための予備実験を予定していた。進捗としてはやや遅れている。理由としては2点あり、1つは開発している中性子スペクトロメーターの再設計の結果が芳しくないこと、2点目は予備実験を行うために利用予定であった大阪大学強力14MeV中性子工学実験装置OKTAVIANの冷却装置が2023年3月末に故障し、10月ごろまで修理のため利用できなかったことから、予定していた予備実験がまだ完了していないことがあげられる。 (1)の設計改良はMCNP6を用いたモンテカルロシミュレーションにより、熱外中性子場照射用の実験体系を用いて角度を変えながら中性子場測定を行った場合の測定シミュレーションを行い、その結果を空間中性子スペクトルと比較することで、高速中性子による影響を評価し、測定対象外となる高速中性子の影響を低減する設計を模索する研究を行ったものであった。しかしながら測定確度を大きくする際に検出器側面が中性子照射体系に近づき、高エネルギーの漏れ中性子の影響が大きくなること、検出器側面の遮蔽材の厚さを単純に厚くする方法では検出器が実験体系と干渉して測定可能角度を著しく制限してしまう問題があり、これらの点に関する解決策を現在模索中である。 (2)については昨年10月時点に加速器の修理自体は完了したものの、修理期間中に予定されていた別の実験を行うためにマシンタイムが占有されて実験が実施できなかった。以上のことより、進捗状況は区分(3)と判断した。加速器の修理自体は完了しているため、2024年度中には2023年度の遅れを挽回できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は引き続き、(1)液体減速型中性子スペクトロメーターの設計改良、(2)二重微分中性子スペクトル測定のための予備実験を進める。特に(1)の問題は、二重微分中性子スペクトル測定の治具製作のスケジュールにも係わるため、可及的速やかに進める。この成果は5月までに一定の結論を出し、2024年6月の20th International Congress on Neutron Capture Therapy にて発表する予定である。 (2)については、スペクトロメーター設計と並行して放射化箔を用いた多重箔放射化法などにより、事前に測定中性子場の特性を評価する。また、実際に角度を変えながら測定を行う場合の実験プロトコルについても検討を進める予定である。 予備実験は2024年9月までには完了し、10月には実験体系および実験プロトコルの決定と治具の発注、製作を行う。その後12月までに、本課題申請時点で予定されていた角度・エネルギー2重微分中性スペクトル測定実験の実施する予定である。
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