研究課題/領域番号 |
23K13693
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
徳永 紘平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 人形峠環境技術センター, 研究職 (50814729)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | adsorption / uranium / arsenic / siderite / goethite / ferrihydrite / XAFS / Arsenic / Uranium / Siderite / Goethite |
研究開始時の研究の概要 |
天然の環境中での放射性核種の挙動の理解とその環境回復は重要な課題である。本研究では、人形峠センターの堆積環境にて確認される溶存酸素濃度に応じて化学組成・結晶構造を変化させるシデライトに着目して研究を行い、シデライトからゲーサイトへと結晶相が変化する過程におけるヒ素やウランの取り込みを明らかにすることで、環境中での元素の移行・濃集の挙動の理解に必要な知見を得ることを目的とする。この系統的研究が完遂されれば、天然の反応に潜む普遍的な物理化学原理の抽出が可能となり、地球表層における放射性核種を含むあらゆる元素の長期間に渡る物質循環予測研究として、基礎と応用の両面で重要な研究となることが期待される。
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研究実績の概要 |
原子力機構人形峠環境技術センター(以下、人形峠センター)は旧ウラン鉱床であるため、(i)浅い地下水(坑水)にウラン(U)やヒ素(As)が溶存し移動しているとともに、(ii)坑水に多量に含まれる鉄イオンが酸化することで生成する(水)酸化鉄にU等が吸着・共沈して堆積している。このような表層環境におけるUやAs(ヨウ素のアナログ)の環境動態の解明は、福島原発事故由来の放射性廃棄物処分において、放射性核種の挙動の理解や環境回復で重要である。本研究では、天然の堆積環境におけるUやAsの挙動を、溶存酸素濃度に応じて化学組成や結晶構造が変化する鉄鉱物との関連性から、室内実験及び環境試料の分析から系統的に明らかにすることを目的としている。 今年度は人形峠センター堆積物中のUやAsの環境動態について、(1)吸着・脱離等の室内での模擬実験による水-鉱物間の元素の定量的な評価に加えて、(2)放射光X線吸収微細構造(XAFS)法を用いた解析による環境試料中での元素の分子情報(化学種、置換サイト等)を特定した。実験の結果、人形峠センターの表層堆積物中には、堆積物中にはSid.、Gt.、Fh.、マグネタイト(Mag.)といった化学種の異なる鉄鉱物がそれぞれ存在し、AsとUは異なる価数と配位構造で固定されていることが明らかになった。また表層堆積物において、UとAsの化学種の深さ方向の狭い範囲(10-20 cm間隔)での価数変化が確認された。この天然の堆積物中にて、UがU(IV)とU(VI)の両方の価数で存在し、鉱物へ吸着している環境は非常に珍しく、環境中での価数に応じて挙動が変化するU動態研究としても重要な役割を果たす研究となることも期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究成果として、天然環境での鉄鉱物とウラン・ヒ素の関係を明らかにできた。また、今年度の成果の一部をまとめて、Journal of Nuclear and Radiochemical Sciencesの論文誌への発表も行うことができた。以上のことから、本研究は当初の計画通りに進展していると言えるので、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、表層試料での鉄鉱物に関連したウランとヒ素の価数変化を明らかにするため、鉄鉱物の逐次抽出法や天然を模擬した系での室内実験等を行う。また、これらの成果をまとめて、「鉄鉱物の化学状態の変化に伴う人形峠センター(旧ウラン鉱床)堆積物中のヒ素(及びウラン)の移行素過程の解明」として、新たに論文をEnvironmental Science&Technology誌に投稿する予定である。
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