研究課題/領域番号 |
23K13697
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
金井 綾香 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (90960849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 硫化物 / 薄膜 / 半導体 / 化合物太陽電池 / スパッタ法 / 半導体薄膜 / 液相成長法 / 光吸収材料 / 太陽電池 |
研究開始時の研究の概要 |
Cu2SnS3(CTS)を光吸収層に用いた次世代環境調和型太陽電池の開発のために、液相成長により電子の再結合を抑制できる大粒径CTSを実現し、CTS太陽電池のエネルギー変換効率の向上を目指す。そのために放射温度計を備えたデュアルスパッタ装置を構築し、液相中で成長させる液相成長を用いた成膜方法を確立することにより大粒径CTSを実現する。また、硫化銅や硫化スズなどの様々な相を経由したCTS薄膜を成膜し、それを光吸収層として用いた太陽電池の作製・評価を行うことにより、太陽電池におけるエネルギー変換効率との相関を明らかにする。
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研究実績の概要 |
近年、太陽光を用いた再生可能エネルギーの需要が高まっており、安価かつ無毒な元素のみから構成される銅錫硫化物(つまり、Cu2SnS3(CTS))薄膜を用いた次世代環境調和型太陽電池が期待されている。本研究では、再結合要因となる欠陥を多く含むとされている結晶粒界を抑制した大粒径CTS薄膜の実現を目指し、「相制御」をキーワードとしてCTS薄膜の成膜方法の開発を試みた。今年度は(1)大気中で硫化スズ及び硫黄混成蒸気を生成した中での硫化プロセスを用いた成長方法の検討および、(2)同時高周波スパッタ装置の新規構築を行い、真空チャンバー内での組成制御を利用した成膜方法の検討の2つを中心に行った。具体的な成果を以下に記す。
(1)硫化スズ蒸気が比較的多い雰囲気中でCTS薄膜を成長させることにより、CTSにおける結晶構造がより単相化することが分かった。しかし、大気中では硫化スズや硫黄の蒸気量の制御が困難であり、粒径の成長には寄与しなかった。
(2)(1)の知見を踏まえ、1ロットの成膜で幅広い組成の薄膜が得られる真空スパッタチャンバーを構築し、CTS薄膜の成膜を試みた。最初に堆積スパッタレートを制御することにより、CTSの発電組成であるCu/Sn組成比がCu不足組成(Cu/Sn < 2.0)からCu過剰組成(Cu/Sn > 2.0)まで幅広い組成比を持つ薄膜を得ることに成功した。また、この時の基板加熱温度を室温~600℃の範囲で変化させることにより、Raman測定やSEM測定から結晶構造や表面モフォロジーに違いが生じることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で1年目に達成すべき真空装置の構築および、硫化物薄膜の成膜方法における検討を行い、目的の組成比を持つCTS薄膜を得ることを成功した。また、組成や基板加熱温度に伴う相の変化などを観測することで、最終的な目的である相制御による粒径増加における有用な知見を得ることが出来た。さらに、得られている一連の成果は学会発表や査読付き論文などで発表する予定であり、研究全体として順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCTS太陽電池の高効率化を目指し、真空チャンバー内での成長過程中の組成制御における大粒径CTS薄膜の実現を試みると同時に太陽電池も作製する。また、CTS薄膜における成長条件の違いにより太陽電池における変換効率や欠陥特性などにどのような影響が生じるのかについて電気特性を中心に調査する。またこの時の測定手法としては、アドミッタンススペクトロスコピーやインピーダンス測定、J-V特性の温度依存性などを使用し、半導体薄膜内に存在する欠陥などの知見を得ることで変換効率向上への糸口を明らかにする。
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