研究課題/領域番号 |
23K13706
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 駿介 東京大学, 物性研究所, 助教 (10822744)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 振動和周波発生分光 / 超広帯域赤外パルス光 / 遠赤外光領域VSFG / THzパルス / 和周波発生振動分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、触媒反応を誘起するための高強度THzパルス光と、表面吸着種を検出する振動分光を組み合わせた光学系を準備する。超短パルス光を用いた和周波発生分光法(SFG)による吸着種振動分光を行うため、高強度THzパルスの電場に対する吸着種ダイナミクスを明らかにできる。その知見に基づき、高強度THzパルス光が誘起する金属表面上の会合反応を実時間観測追跡する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、超広帯域赤外パルス光を用いた反射配置でのGaAsに対する和周波発生(SFG)分光測定を行った。SFGなどの可視光を用いたアップコンバージョンによる赤外パルス光のスペクトル測定は古くから行われていたが、その多くは固体結晶を検出媒体とした透過配置で行われていた。このため、固体結晶におけるパルス光の位相整合条件による制約があり、この固体結晶を用いた透過配置測定では一度に検出できる測定帯域はせいぜい600 cm-1程度であった。これは、差周波発生により準備したスペクトル幅が比較的狭い赤外パルス光の評価などにおいては問題ではなかった。しかし、本研究で用いる二色レーザー誘起空気プラズマから発生させた超広帯域赤外光を評価する場合には、この位相整合条件に起因した狭い検出帯域は大きな問題となる。そこで、私たちはこの問題を反射配置で測定することによって解決した。SFG分光を固体結晶に対して反射配置で行うことで、位相整合条件の制約は透過配置の場合と比べて大きく緩和される。実際に、我々はGaAs反射配置SFG測定により、超広帯域赤外パルス光を評価し、200 - 3300 cm-1でほぼ一様に赤外パルス光を検出できた。
さらに、この超広帯域赤外パルス光をGaAsに照射し、1ps程度ずらしてから可視光を照射すると、GaAsのフォノンスペクトルが270 cm-1に観測できた。このように、この超広帯域赤外を用いると600 cm-1以下のエネルギー領域での振動共鳴和周波発生(VSFG)分光ができることを示した。このような遠赤外光領域でのVSFG分光は、赤外自由電子レーザーを用いて行われていたが、テーブルトップで準備できる光源としては初めての観測であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究業績に記入したように、2023年度にSFG測定光学系を構築できた。超広帯域光源の特性をいかして、遠赤外光領域のVSFG信号も観測できている。加えて、固体結晶をもちいた差周波発生により高強度赤外光も別に準備できている。 そのため、本研究提案の実現に必要な遠赤外光領域を含んだ様々なエネルギー領域でVSFG分光を行うための光学系と金属表面に吸着した分子の振動モードを励起する光源が整った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度構築した光学系を用いて超高真空環境下の分子吸着系のVSFG測定を実現する。白金単結晶が保持された超高真空装置はすでに構築してあり、すぐにその実験を行える状況にある。
また、並行して大気環境下でのVSFG分光も行う予定である。超高真空環境下の試料に比べて測定しやすいことは当然であるが、金ナノロッドが並んだSi基板など赤外吸収増強効果を有した表面と組み合わせることも容易であり、遠赤外光領域での分子のVSFG信号を得ることも十分可能であると期待する。
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