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アト秒軟X線過渡吸収分光によるルチル・アナターゼ型酸化チタンの光触媒活性差の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K13713
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分32010:基礎物理化学関連
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

今坂 光太郎  国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 特別研究員 (20874449)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
キーワード超高速光科学 / アト秒 / 軟X線 / 非線形光学 / プラズモニクス
研究開始時の研究の概要

光触媒反応では数フェムト秒の時間スケールで電子が授受されて化学反応を促進する。本研究課題ではアト秒の時間幅を持つ軟X線パルスを発生させ、光触媒である酸化チタンの吸収端を捉える過渡吸収分光測定を行うことにより、光触媒反応における電子授受のダイナミクスを観測する。これにより、酸化チタンの光触媒活性がルチル型とアナターゼ型で異なる理由を解明する。本研究が達成されれば、多種多様な遷移金属元素と有機分子の間の化学反応において、両者のアト秒電子ダイナミクスを同時に観測する応用研究が可能になると期待できる。

研究実績の概要

2023年度は、高強度赤外フェムト秒パルス光源を開発して軟X線アト秒パルスを生成すること、過渡吸収分光法による光触媒反応の観測準備を行うことを計画していた。しかし、本研究課題採択時には別の研究機関に所属することとなったため、既存のアト秒軟X線パルス発生装置を利用可能になった一方、実験装置の都合から光触媒反応の観測が行えなくなった。したがって、軟X線アト秒パルスによる電子ダイナミクス観測という本研究課題の趣旨に沿って実施内容を以下のように変更した。
研究要旨:ピーク強度PW/cm2級の軟X線孤立アト秒パルスを生成し、これを励起源として固体中非線形光学現象を観測する。前者は、所属研究機関が保有するピークパワーGWの軟X線孤立アト秒パルスを特注の回転楕円体ミラーを用いてビーム径1 μm以下に集光して実現する。後者は焦点に固体薄膜試料を設置することにより固体中非線形光学現象の代表例である第二高調波発生と可飽和吸収を観測する。アト秒非線形光学現象は従来気体でしか観測されていなかったが、アト秒光パルスのピーク強度を非線形光学現象を誘起できるほど高めることによりこれを実現する。これにより、高原子密度やバンド構造形成などの特徴を持つ「固体」でどのような非線形電子ダイナミクスが生じるかを明らかにする。
実績概要:軟X線孤立アト秒パルスを集光するための回転楕円体ミラーを5軸(回転2軸含む)のステージ上に設置し、集光位置の調整や収差除去を可能とする機構を構築した。集光位置に試料を保持する機構も作製し、3軸のピエゾステージによりサブミクロン精度で位置を固定可能にした。本集光光学系を用いてHe-Neレーザーの集光実験を行い、集光ビーム径8 μm(回折限界の1.3倍)を達成した。これは軟X線領域に置き換えると集光ビーム径0.77 μm、ピーク強度3 PW/cm2に相当する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は第一に軟X線孤立アト秒パルスのサブμm集光光学系の構築を行った。真空チャンバー中に回転楕円体ミラー、試料ホルダー、およびそれらを保持するステージを設置し、その位置や回転角を制御するプログラムを作成した。また、試料ホルダー上に設置したシリコン製の型枠を用いて全自動でナイフエッジ測定するプログラムを作成し、集光ビーム径および収差の評価を効率化した。He-Neレーザーを用いたナイフエッジ測定によりこの集光光学系を用いた軟X線孤立アト秒パルスのサブμm集光実現可能性を示すことができた。X線CCDカメラを用いた軟X線孤立アト秒パルスの観測にも成功しており、測定条件の最適化およびナイフエッジ測定によるサブμmサイズの集光ビーム径評価が進行中である。これは、従来の研究計画における高強度赤外フェムト秒パルス光源開発および軟X線アト秒パルス生成の部分に相当し、その大部分を達成できたと評価できる。
第二に研究計画の変更に伴う固体中非線形光学現象観測の実現可能性の再検討を行った。軟X線領域では励起光を吸収する場合に共鳴効果により第二高調波発生効率が高くなることが知られており、ピーク強度TW/cm2程度の軟X線フェムト秒パルスによるチタン薄膜やグラファイトでの発生例が報告されている。また、ピーク強度PW/cm2程度の軟X線フェムト秒パルスによる窒化シリコンの可飽和吸収の観測例も報告されている。本研究では電子の時間スケールを捉えられるアト秒パルスを用いるが、同様に第二高調波発生と可飽和吸収を観測できる可能性が高いと結論付けた。これは、従来の研究計画における過渡吸収分光法による光触媒反応の観測準備の部分に相当し、順調に研究を遂行できていると評価できる。

今後の研究の推進方策

2024年度は第一に軟X線孤立アト秒パルスのサブμm集光によりピーク強度PW/cm2を達成する。高次高調波発生の最適化による軟X線孤立アト秒パルスの高強度化および安定化、X線CCDカメラ設定による高感度エネルギー測定のための最適化によりこれを実現する。ナイフエッジ測定によりこれを評価し、収差を補正してピーク強度を最大化する。
第二に固体中非線形光学現象である第二高調波発生と可飽和吸収を観測する。市販の薄膜試料に上記のピーク強度PW/cm2級の軟X線孤立アト秒パルスを作用させ、これらの現象を誘起する。薄膜試料はPW/cm2のピーク強度による損傷が予想されるため、各光ショット毎に試料の異なる位置に照射させて測定データを集計するためのプログラム開発を行う。X線CCDカメラによる強度測定に加えて光電子飛行時間(eTOF)測定による分光計測を行い、固体のアト秒非線形光学現象における電子ダイナミクスを明らかにする。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] ギガワット級アト秒パルスのサブミクロン集光の実現2024

    • 著者名/発表者名
      今坂光太郎
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第44回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Sub-micrometer focusing of GW-scale attosecond pulses2023

    • 著者名/発表者名
      K. Imasaka
    • 学会等名
      RAPAC2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ギガワット級アト秒パルスの発生とナノメーター集光の実現2023

    • 著者名/発表者名
      今坂光太郎
    • 学会等名
      Q-LEAP 第30回ATTO懇談会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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