研究課題/領域番号 |
23K13717
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
栗原 拓也 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50858272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 金属-有機構造体 / 固体NMR / 二酸化炭素 / CO2分離 |
研究開始時の研究の概要 |
金属-有機構造体(MOF)は高いCO2吸着分離能を有し、環境問題の一つである温室効果ガス排出の低減のための有望な材料として研究されている。しかしながら、ほとんどのMOFは空気中の水分子の吸着でCO2吸着が大きく阻害されるという課題があり、工業におけるガス分離プロセスに利用するためには湿潤下でも使用可能なMOFが求められる。本研究では、水分子吸着状態でも高圧下でCO2を吸着できるMOFであるMIL-53に対し、固体核磁気共鳴法を用いてその吸着メカニズムの解明を行う。本研究で得られた知見を材料設計に還元することで、実用的なMOFの開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
金属-有機構造体(MOF)はCO2分離材料として注目され研究が進められている。多くのMOFは空気中の水分子の吸着によってCO2吸着能が大きく低下するという問題がある。工業におけるガス分離プロセスへの利用のためには、どのような特性のMOFが湿潤環境下においてどのようにCO2を吸着するのか、そのメカニズムを理解し、材料設計等へとつなげることが重要となる。柔軟な骨格を持つMIL-53は、水分子が吸着することでlarge pore構造がnarrow pore構造へと変化し、そこへCO2を高圧で印加することで再度large pore構造への転移が生じるとともにCO2を吸着する。本研究ではMIL-53に対し、固体NMR法によるゲスト分子の運動性の観測を通じた吸着メカニズムの解明を試みた。NMR磁場中にてCO2を様々な圧力で試料へ導入可能な固体NMRプローブを作製し、D2Oを吸着したMIL-53に対し13C同位体濃縮CO2ガスを0-2MPaで導入し2Hおよび13C NMR測定を行った。得られたスペクトルの線形解析によりCO2およびD2Oの動的な吸着状態を明らかにし、その圧力変化からCO2吸着および構造転移のメカニズムを探った。その結果、narrow pore構造においてD2OはMOF骨格と複数の水素結合を形成して吸着しており、そこへCO2圧を印加していくと吸着サイト上におけるCO2とD2Oの競合吸着およびD2O-MOFの相互作用の低下が生じる様子が見られた。更に圧力を上げることで、MOFの構造転移と共に多量のCO2が吸着し、加えてD2Oの吸着が大きく弱まる様子が観測された。MOFとの強い相互作用によってnarrow pore構造を形成していたD2Oの吸着がCO2吸着によって弱められ、構造転移が引き起こされたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ガス雰囲気下測定用のin situ NMRプローブの作製、およびCO2雰囲気下における圧力可変固体NMR測定を実施し、得られたスペクトルよりCO2およびD2Oの動的吸着状態の解析を進めることができた。放射光におけるCO2雰囲気下粉末XRD測定も予定通り実施した。これらの測定・解析の結果より、MIL-53の構造転移及びCO2吸着の進行する詳細なプロセスが明らかとなりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、対照実験としてMIL-53と類似の構造を有し、構造転移を示さないMOFに対して同様の測定・解析を行うことで、CO2吸着と構造転移の関係性を詳細に明らかにする。また、吸着によるエネルギー変化を定量的に解析するため、DFT計算等も取り入れて研究を進める予定である。
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