研究課題/領域番号 |
23K13729
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兒玉 拓也 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (80823989)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 典型元素 / ラジカル / 低原子価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①単離可能な中性14族1価ラジカル(=非Gomberg型ラジカル)を新たに合成し、②その性質を分子構造と電子構造の観点から詳細に明らかにし、③特殊な電子状態に起因する特徴的な物性・反応性を見出すことを目的とする。実験化学(新規化合物の合成と評価)と理論化学(量子化学計算を用いた解析)の両輪で、実験的検証が未だ不十分な「非Gomberg型ラジカル」の基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
今年度は単離可能な非Gomberg型ゲルマニウムラジカルの合成と評価に取り組んだ。独自に開発したフェナレニル型配位子(DipN-PLY)に対し、①塩基による配位子の窒素上プロトン引き抜き、②ジクロロゲルミレンとの反応による前駆体合成、③KC8を用いた還元により非Gomberg型ゲルマニウムラジカルを合成した。ベンゼン溶液からの再結晶では、配位子上結合を形成した二量化が得られた。この二量体を減圧下300℃で加熱することにより、目的の非Gomberg型ゲルマニウムラジカルを結晶として単離することに成功した。X線構造解析により分子構造を明らかにし、電子スピン共鳴測定および、量子科学計算により実験・理論の両面から電子構造・スピン構造を解明した。反応性に関しては、炭素反応剤とは配位子側でラジカル的な反応性を示す一方で、ハロゲン、酸素、硫黄反応剤とはゲルマニウム上で結合を形成することが明らかとなった。更に、ゲルマニウム上における3つの新たなσ結合形成という、非Gomberg型ラジカル特有の反応性も実証した。これらの成果は国際誌および国内外の学会で口頭発表した。対応するケイ素、および炭素ラジカルに関しても合成検討を進めている。加えて、関連する13族アナログである1価ガリウムについても合成と単離に成功し、可視光吸収特性や様々なσ結合への酸化的付加や種々のπ成分との酸化的環化、遷移金属への配位など興味深い物性・反応性が明らかとなっている。本成果に関しても、国際誌および国内外の学会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独自の配位子を用いた熱力学的安定化の戦略により、単離可能な非Gomberg型ゲルマニウムラジカルの合成と単離に成功した。既知の類似ラジカルに比べて高い熱安定性を有しており、研究コンセプトを実証できた。さらに、中心元素上における3つの新たなσ結合形成という、非Gomberg型ラジカル特有の反応性も明らかにした。対応するケイ素および炭素ラジカルに関しても、合成の鍵となる試薬の検討を進められており、加えて関連する13族アナログである1価ガリウムについても合成、単離に成功していることから計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(DipN-PLY)Geの合成法を基に、①塩基によるDipN-PLYの窒素上プロトン引き抜き、②ハロゲン塩等との反応による14族元素導入、③KC8等を用いた還元、により非Gomberg型炭素およびケイ素ラジカルを合成する。操作はグローブボックス内で実施し、結晶として単離後、X線構造解析により分子構造を明らかにする。紫外可視分光測定、電気化学的測定、電子スピン共鳴測定により溶液物性および安定性を評価する。同時並行で計算科学的手法を用いた電子状態解明にも取り組む。これらを統合して、中心元素に応じた非Gomberg型ラジカルの多様な分子構造や電子物性発現に関する体系的な基礎を確立する。また、フェナレニル型配位子特有の両性レドックス特性を活かした機能開拓にも取り組む。
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