研究課題/領域番号 |
23K13730
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安藤 直紀 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80848979)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ホウ素 / π電子系 / 空軌道 / 集積化 / 電子輸送 / 光学特性 |
研究開始時の研究の概要 |
π共役骨格を空間的に近接させることは,特徴的な物性や機能をもつπ電子系を創出するうえで重要なモチーフである.特に,典型元素を含むπ電子系では,空間を介した元素特有の軌道相互作用に起因した特性の発現が期待される.本研究では,空のp軌道をもつホウ素を含むπ電子系に着目し,空軌道を集積化させることによるπ電子系の機能開拓を目的とする.具体的には,ホウ素を含むπ共役骨格を密に配列させた場合の物性や機能の解明に取り組む.この知見をもとに,空軌道間の相互作用を切り口としたπ電子系の機能開拓を目指す.
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研究実績の概要 |
機能性有機ホウ素材料では、その機能を創出するアプローチとしてホウ素の空軌道とπ共役骨格との相互作用を活かした分子設計が主流である。近年では、ホウ素の空軌道どうしの相互作用に着目した研究も展開されている。しかし、後者の多くは、ホウ素原子を隣接して配置し、空軌道が平行に重なる相互作用をもつ化合物に関する研究がほとんどであり、空軌道が共線的に重なる相互作用をもつ化合物に関する研究例は限られている。本研究では、ホウ素の空軌道間での共線的な相互作用に着目し、ホウ素の空軌道を集積化させた分子系の物性・機能の解明を目的とする。また、空軌道の集積化を切り口にπ電子系の機能開拓を目指す。まず、空軌道を集積化させるための設計指針について知見を得るため、合成容易な化合物をモデル基質とし、これに異なる置換基を導入した化合物を合成した。得られた化合物について単結晶X線構造解析を行なったところ、ハロゲンやフルオロアルキル基を導入した化合物ではホウ素原子が空間的に近接し、かつ共線的に配列した構造をとることがわかった。さらに、これらの結晶構造を用いてADF計算を実施したところ、ホウ素原子がずれて積層し、空間的に離れたパッキング構造をもつ化合物と比較すると、今回得られた化合物はより大きな電子移動度をもつことが示唆された。また、空軌道を集積化する効果を明らかにするため、モデル化合物を用いた検証にも着手した。現在までに、モデル化合物のコア骨格となるホウ素を含むπ共役ユニットおよびスペーサーユニットの合成を達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、いくつかの化合物について結晶構造中でホウ素原子が空間的に近接して積層することを確認することができた。また、これらの化合物では、ホウ素原子がずれて積層する類似の構造をもつ化合物と比較して、大きな電子移動度をもつことがADF計算により示唆されている。一方で、空軌道を集積化する効果の検証に関して、モデル化合物の合成に遅れが生じており十分な検討ができていないことから、研究計画がやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
空軌道を集積化する効果を明らかにするため、モデル化合物を用いた検証を進める。具体的には、本年度合成を達成した各ユニットを用いてモデル化合物を合成し、物性を調査する。このときモデル化合物に含まれるホウ素原子の配列や距離をスペーサーユニットやコア骨格に導入する置換基により調整し、これが光・電子特性に及ぼす影響を精査する。同時に、本年度見出した化合物について、電子輸送特性の評価を実施する予定である。また、理論計算を用いて分子間相互作用など詳細な解析を進め、集積化を実現するための要素を検討する。
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