研究課題/領域番号 |
23K13738
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋山 世治 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (50894581)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ホウ素 / 脱芳香族化 / ボレピン / ベンゼン環修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
ボレピンはホウ素原子を含む環状化合物であり、反応性の高いホウ素に由来した特徴的な変換反応が期待できる。最近、ベンゼン環に対して2段階でホウ素が挿入する新しい反応形式で単環式のボレピンが合成できたことで、豊富に存在するものの反応性の低いベンゼン環を、反応性の高いボレピン環へと直接化学変換することが可能になった。本研究では、反応性に乏しいベンゼン環を反応性の高いボレピン環へと変換し、これを経由することで導入されたホウ素の反応性を活用して医薬品や香料といった有用物質の中心となる構造へと変換を行う。すなわち、ボレピンの反応性を活用し、ベンゼン環を化学原料として利用可能にする化学変換技術の確立をめざす。
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研究実績の概要 |
本年度は、置換ベンゼン類から安定して単環式ボレピンを合成する手法開発を行った。本研究では、ベンゼン環を原料とした単環式ボレピンの自在合成を確立し、さらに単環式ポレピンの新規変換反応を開発することで単環式ボレピンを鍵中間体としたベンゼン環変換技術を構築することを目的としている。この目的を達成するためは、まずどのようなベンゼン環がどの程度の収率でボレピンへの変換が可能であるかを明らかにする必要がある。本研究で取り組む単環式ボレピン合成経路は2段階からなり、まずその第1段階について詳細な検討を行った。まず1,4-2置換ベンゼン類を中心に調査し、第1段階目の反応の基質適用範囲が明らかになった。本反応では大きな立体障害にも強く、高収率で生成物が得られたが、本反応は強還元条件を用いるため一部の置換基では生成物が得られなかった。第2段階の反応でも、多くの基質で単環式ボレピンを得ることができ、今までに合成例がない置換ボレピン類を多数合成することに成功した。また対称性の低い一置換ベンゼンを原料にした場合には、第2段階の反応においてほぼ同量の2つの異性体が生じたことから、非常に活性化障壁の近い2つの遷移状態を通ってそれぞれ異性体が生じたと推測している。またそれぞれの反応ステップにおける生成物は、酸素および水の存在下で速やかに分解するため、精製においてはカラムクロマトグラフィー等の使用が困難であった。そこでグローブボックス内での再結晶および嫌気下かつ高真空下でのクーゲルロール蒸留を併用して用いることで各生成物の精製が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により従来合成が困難であった置換基をもつ単環式ボレピンが、置換ベンゼンから合成可能となった。特に本研究で達成したアルキル基やヘテロ元素を有する置換基をもった単環式ボレピンの合成は、原料をベンゼン環に限らずとも合成が難しいため、従来合成できなかった単環式ボレピンが置換ベンゼン類から合成できたことは、ボレピンの合成化学として大きな前進といえる。その一方で、ボレピンおよびその前駆体の取り扱いおよび精製は、酸素および水に対する不安定性のため困難であり、特に置換基をもつ単環式ボレピンは油状物質であったため、その精製に多くの時間を要した。最終的にはグローブボックス内での再結晶および高真空下かつ嫌気下でのクーゲルロール蒸留を併用することで、合成に利用可能な水準での精製が可能となった。また各反応における量子化学計算による反応機構解析を行い、それぞれの反応段階における律速段階もすでに特定されている。そのためこれら遷移状態を考慮することでより一層効率的な反応へと改善することも可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、単環式ボレピンの大スケール合成を進めながら、ボレピンの反応性調査を量子化学計算および実証実験を通して実施する。具体的には今まで用いた小スケール用クーゲルロール蒸留装置を大型のものへと更新し、嫌気下での取り扱いを容易にするためのガラス加工を依頼することでより効率よくボレピン合成を進める計画である。量子化学計算では、ボレピンと反応可能な小分子や試薬、あるいは遷移金属錯体との錯形成を検討することで、効率的にボレピンのもつ反応性を明らかにしていく。
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