研究課題/領域番号 |
23K13743
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 弘嗣 福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (60827682)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | パラジウム触媒 / 二座配向基 / ヒドロ官能基化 / anti-Michael型付加 / anti-Michael型反応 / 炭素-炭素結合生成 / α位付加 |
研究開始時の研究の概要 |
α,β-不飽和カルボニル化合物への付加反応は、電子的特性からβ位付加が優先的に進行する。一方で逆の位置選択性であるα位付加(anti-Michael型付加)はほとんど報告されていない。もしanti-Michael型付加が進行すれば、医薬品等に多いα-置換カルボニル化合物をワンステップかつ原子効率100%で合成できる理想的な反応を実現できる。 本研究では、カルボニル部位に配向基を導入して遷移金属触媒とアルケン部位を近づけ、相互作用を強めることにより、五員環メタラサイクル中間体を経るα位選択的な付加を達成する。また種々の求核剤を用い、求核剤と付加方向との相関を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
一般的にα,β-不飽和カルボニル化合物への求核剤の付加反応はβ位選択的である(Michael付加)。一方で、これとは逆の選択性、すなわちα位での求核付加(anti-Michael型付加)は、電子的な要因から困難とされている。そこで本研究ではanti-Michael型付加を実現する手法の開拓を行った。 具体的には、パラジウム触媒の存在下、配向基に8-アミノキノリンをもつアクリルアミドに対するanti-Michael型付加反応の検討を行った。インドールを求核剤として反応を実施した結果、配向基の導入と触媒の効果により、従来とは逆のanti-Michael型付加が選択的に進行することを見出した。また、この反応はアクリルアミドだけでなく、桂皮酸アミド誘導体やクロトン酸アミド誘導体といったβ位に置換基を持つα,β-不飽和アミドにも適用可能であった。しかしβ位置換基として長鎖アルキル基を有する場合には収率が大きく低下することも同時に判明したため、これらの基質に対する収率改善が新たな課題として浮上した。求核剤としてはインドール以外にも2-ピリドンなどのヘテロ求核剤が適用可能であり、これらの化合物でも非常に高い位置選択性が観測された。これらの結果から、anti-Michael型付加反応により、さまざまなα-置換カルボニル化合物を合成できる可能性を示せた。 また不斉anti-Michael型付加反応の検討も行った。不斉配位子として単座配位子を適用することにより、中程度ではあるが、エナンチオ選択性が発現することが判明した。 上記の反応に加えて、anti-Michael型付加を起点とするアルケンの位置選択的な二官能基化反応が中程度の収率で進行することも明らかにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題で第一の目的としていた配向基と遷移金属触媒によるanti-Michael型付加が円滑に進行することを示すことができた。加えて、さまざまな求核剤への応用がスムーズに展開できていることから、当初の初年度の目標以上に研究が進行したといえる。 また上記で開発したanti-Michael型付加を基盤として、アルケンの位置選択的な二官能基化が進行することも見出せ、anti-Michael型反応の将来的な応用の方向性も示すことができた。これらの理由から、当初の計画以上に進行していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
さまざまな求核剤にanti-Michael型付加を適用できることが判明したので、これらの反応の収率改善を目指し、検討を進めていく。また研究の進行に伴い、当初想定していた反応機構とは異なる機構で反応が進行する可能性が示唆されたため、反応機構の解明に向けた詳細な検討も行う。 加えて、新たに見出したアルケンの位置選択的な二官能基化についても、その詳細を詰める予定である。
|