研究課題/領域番号 |
23K13745
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中島 翼 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00912742)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ラジカルカチオン / 分子性触媒 / 共有結合触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
反応性の高い化学種であるラジカル中間体を利用する反応は、イオン反応では実現困難な結合形成を可能にする。ラジカルカチオンは高い求電子性を示す一方で、触媒としての利用は限定的である。本研究では、ラジカルカチオン求電子触媒として利用した不活性結合の官能基化と不斉反応への応用を行う。高い求電子性と基質認識能の両立を指向した分子設計により、光レドックス条件下における不活性アルケンの効率的な官能基化、ならびに種々の炭素-炭素結合、炭素-ヘテロ原子結合への変換を可能にする求電子触媒としての機能を創出する。
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研究実績の概要 |
ラジカルカチオンの求電子的触媒としての機能開拓と不活性アルケンの活性化を目的として研究を遂行した。本研究の開始時に見出していた末端アルケンの官能基化反応の可能性を示唆する知見については、ラジカルカチオン触媒とアルケンとの間の共有結合形成段階および触媒を再生する段階の両立が困難であることを示す結果を得た。そのため、触媒構造の再検討を行うこととした。 一方で、基質と触媒構造の探索過程において、光レドックス触媒を用いてチオカルボニル化合物を一電子酸化することで生じるラジカルカチオンが求電子的なラジカル触媒として機能し、ビニルシクロプロパンとアルケン類の[3+2]付加環化反応が円滑に進行することを見出した。本反応は、従来の付加環化反応で用いられてきた電子求引基を有する比較的反応性が高い基質のみならず、単純なアルキル基やアリール基が置換したビニルシクロプロパンへの適用も可能であり、本研究で開発した触媒の有用性を示す結果となった。また、本触媒はビニルエポキシドのC-C結合の開裂を伴うアルケンとの[3+2]付加環化反応への適用も可能であることが明らかとなった。触媒構造を最適化する過程で、ラジカルカチオンを形成した際にラジカルとカチオンが分極するような分子構造を設計することで触媒の堅牢性と反応性が向上することも見出しており、今後、さらなる詳細な反応機構解析や触媒の構造修飾を行うことで、多様なアルケン類を用いた反応開発へと展開できることが見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不活性アルケンの活性化に関しては、当初計画していた触媒システムの構築が困難であることが判明したものの、新たに見出したチオカルボニル化合物由来のラジカルカチオンが共有結合性ラジカル触媒として機能するという当初予想していなかった知見をもとに、従来の[3+2]付加環化反応において適用されなかった基質を用いた変換反応の開発に成功した。特に、C-C結合の切断を介するビニルエポキシドのラジカル付加環化反応はこれまでに触媒反応の報告例がなく、本研究おいて開発した触媒により実現された結果であると考えている。一方で、本研究で見出した触媒構造はさらなる構造修飾の余地を残しており、ラジカルに結合するカチオン部位の構造やラジカル中心の原子の変更により新たな反応性の創出につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
不活性アルケンとの結合形成と脱離による触媒再生を両立する触媒構造の開発を継続して行う。本研究を遂行する過程で見出したラジカルカチオン触媒は、基質とのC-S結合形成を起点に反応が進行することを明らかにしているが、C-S結合が比較的弱いことに起因する結合形成の可逆性が通常のアルケンに対する反応性の低さの要因の一つであると考えている。そこで、触媒骨格のチオカルボニル基をカルボニル基やイミン構造へと変更することで多様なヘテロ原子中心ラジカルカチオン触媒を設計・合成し、反応性の向上を試みる。 ラジカル中心のヘテロ原子の変更と並行して、様々な基質を用いたラジカル環化付加反応の開発を行う。具体的には、光レドックス触媒を用いることの特徴の一つであるラジカル-極性交差機構を利用した新規反応開発を検討する。
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