研究課題/領域番号 |
23K13747
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 隼斗 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10963598)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 典型元素触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
遷移金属錯体はその可逆的な酸化還元特性により触媒作用を発現する。実際、クロスカップリングに代表されるように遷移金属触媒を用いる多様な変換反応が開発され、現在の有機合成に必要不可欠な手法となった。一方、埋蔵量の少ない希少な遷移金属が必須である点は依然問題である。持続可能性を鑑みると、天然に豊富に存在する典型元素からなる触媒の活用が望まれる。本研究では、低原子価の一価リン種が本質的に備える高い求電子性を活用した新たな触媒反応の開発を目指す。具体的には一価のリン化学種と三価のホスフィンとの酸化還元を利用した、低原子価リン化学種によるレドックス触媒作用を開拓する。
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研究実績の概要 |
有機リン化合物は三価のホスフィンと五価のホスホランを安定に取り得ることから、その酸化還元を利用した触媒反応への応用が近年注目されている。しかしながら、リン三価/五価レドックス触媒反応は、ホスフィンに由来する求核性および酸素親和性を活用した変換反応に限定的である。本研究では、低原子価の一価リン種が本質的に備える高い求電子性を活用した新たな触媒反応の開発を目指した。具体的にはホスフィニデンと呼ばれる一価のリン化学種と三価のホスフィンとの酸化還元を利用した、低原子価リン化学種によるレドックス触媒作用(リン一価/三価レドックス触媒反応)を開拓に取り組んだ。今年度は、触媒であるイミノ安定化ホスフィニデンの合成に取り組んだ。その結果、窒素上にt-ブチル基、シクロヘキシル基、メシチル基等の種々の置換基を有するイミノ安定化ホスフィニデンの合成を達成した。また、得られたイミノ安定化ホスフィニデンにオルトキノン類を加えることで三価のホスフィンが生成することを各種測定によって確認した。すなわち、一価のリン化学種から三価のホスフィンへの変換が可能であることを明らかにした。一方で、過剰のオルトキノン存在下では三価のホスフィンがさらに酸化され五価のリン化学種へと変換されることも明らかとなった。そのため、三価のホスフィンを選択的に発生させるためには添加するオルトキノンの当量を制御が重要であるという知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の触媒反応(リン一価/三価レドックス触媒反応)に利用する一価のリン触媒のライブラリ作成に成功し、リン触媒の反応性を調査した。その結果、オルトキノンとの反応によって一価のリン化学種から三価のホスフィンが生成することを明らかにした。この過程は目的の触媒反応における素過程の1つである酸化的環化反応であり、リン一価/三価レドックス触媒反応の実現に期待を持たせるものである。以上より本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
リン一価/三価レドックス触媒反応を実現するためには、一価リン触媒の合成、一価のリン化学種から三価のホスフィンへ変換する「酸化的環化」、三価のホスフィン上の置換基の変換する「配位子交換」、三価のホスフィンから一価のリン化学種を再生する「還元的脱離」の達成が必要である。今年度は反応の実現に向けて、一価のリン触媒のライブラリ作成に取り組んだ。その結果、種々の一価リン触媒の合成に成功した。また、得られた一価リン触媒の反応性を調査したところ、一価のリン化学種から三価のホスフィンへ変換する「酸化的環化」が進行することを確認した。以上を踏まえて今後の研究では「配位子交換」および「還元的脱離」の過程を達成する必要がある。これらの素過程は「酸化的環化」によって得られる三価のホスフィンを用いることで反応検討が可能であると考えている。触媒反応のモデル基質としてケイ素求核剤を用いて反応条件(酸化剤、溶媒、反応温度)を検討することで、「配位子交換」および「還元的脱離」の過程を効率的に進行させ、最終目標であるリン一価/三価レドックス触媒反応を実現する予定である。
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