研究課題/領域番号 |
23K13748
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐藤 英祐 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (20880248)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 有機電解反応 / 陽極酸化 / 転位反応 / 触媒 / 電解反応 |
研究開始時の研究の概要 |
電子豊富な部分構造であるエノールエーテルやエナミン、エナミドといった有機化合物を陽極酸化することで生じるラジカルカチオンを利用した新規化学反応の開発を行う。また、電気化学測定などを駆使することで、有機合成化学と電気化学の双方の観点から、反応メカニズムに関する調査を行う。これにより、陽極酸化触媒型の化学反応プロセスを、一般的に利用可能な化学反応として昇華させる。
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研究実績の概要 |
本研究では、電子移動を触媒とするような電解反応の開発に取り組んでいる。特に陽極酸化においては、電子豊富なフェノール類やエノールエーテル類を酸化することで生じると考えられるラジカルカチオンを用いた骨格変換反応を開発している。これまでに、アリルアリールエーテルに対して陽極酸化を行うと、クライゼン転位反応が進行することを見出していたが、その反応メカニズムや基質適用範囲の調査は十分に行えていなかった。当年は、主に反応機構の調査に取り組み、ラジカル機構だけでなく、電解発生酸も転位反応の進行に重要であることを支持する結果が得られた。反応機構の調査に基づいて、再度反応設計をすることで、安定した収率でクライゼン転位化合物を得ることに成功した。 さらに、本反応における通電量を増加させると、生じたクライゼン転位体のフェノール性水酸基から二重結合に対する求核攻撃を経るような環化反応が進行することも明らかとなった。また、クライゼン転位と環化反応の反応速度には差があり、その選択性は用いる反応溶媒や支持電解質によってコントロール可能であることもわかった。以上の調査を通して、クライゼン転位と環化反応の成績体を選択的に得る合成手法として触媒的な陽極酸化が有効であることがわかった。 さらに、エノールエーテルを有する化合物の一種であるグルカール類への触媒的な陽極酸化によって進行するフェリエ転位反応について、様々な求核剤を用いてその反応性を調査した。これまでに確立していたシアノ基だけでなく、その他の炭素求核剤やアルコール類、アミン類なども求核剤として適用可能であり、それらを用いて対応する付加体を高い収率で得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アリルアリールエーテルに対する陽極酸化によるクライゼン転位反応の反応機構調査を行うことで、転位反応の進行には電解発生酸と呼ばれる強力な酸の存在が重要であることを見出すことができた。ラジカルカチオンのみで進行すると考えていた研究開始当初の反応設計とは異なるものの、転位反応の収率が向上しつつあり、高い電流効率でのクライゼン転位反応の開発は大きく進展していると考えられる。 さらに、さまざまなグルカール誘導体に対するフェリエ転位反応について、これまでに用いていたTMSCN以外の炭素、酸素、窒素、硫黄の求核剤を用いることにも成功し、電子移動を触媒とするフェリエ転位反応の一般性を拡大することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
触媒量の通電によるクライゼン転位反応が比較的安定した収率で進行することが明らかとなったため、本年はその収率向上とともに、基質適用範囲の調査などを実施する。さらに、転位反応の後に環化反応が進行することもわかってきたため、転位反応と環化反応の選択性を向上させ、適切な電解反応の条件を選択するだけで、それらの化合物を合成し分けることにも挑戦する。
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