研究課題/領域番号 |
23K13751
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
増田 涼介 学習院大学, 理学部, 助教 (30965794)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | カルコゲン / 硫黄 / ラジカル / 合成化学 / セレン |
研究開始時の研究の概要 |
資源量の豊富な典型元素の性質を活かした有機合成は重要な研究課題であるが、炭素の化学と比較すると立ち遅れている。本研究では、これまで合成すらなされていない新たなカルコゲン元素含有化合物の化学変換により、新規な炭素ラジカル種発生法の確立を目指す。発生するカルコゲン含有炭素化学種は、既存のラジカル種と比較し高い反応性を有すると予想される。これらを利用することにより、従来困難であった化学変換の実現と、医薬品や材料化学において重要な含カルコゲン化合物の簡便な構築が可能となる方法論の開発を行う。
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研究実績の概要 |
カルボニルの炭素上がラジカルとなったアシルラジカルは、産学双方で需要の高いカルボニル化合物を簡便に構築できるため、大変有用な合成素子である。そのため、多様な基質からアシルラジカルを発生させる方法論の開発は、精力的に行われてきた。一方、アシルラジカルの硫黄同族体であるチオアシルラジカルは、より高い求核性を有すると予想されるため、不活性な分子とも容易に結合を形成することが期待できる。しかしながら、ヘテロ元素の隣接したものを除き、これまでに炭素置換チオアシルラジカルを発生させる常法は全く知られていない。そこで本研究では、(1) 適切な隣接置換基を導入したチオカルボニル化合物を設計・合成し、(2) 光誘起一電子移動反応と組み合わせることにより、広範なチオアシルラジカル発生法と、その炭素-炭素結合生成反応の確立を目指し、研究を推進している。 本年度は初めに、(1) を主軸として検討を行った。その結果、ヘテロ元素の隣接したチオカルボニル化合物の合成・単離とX線回折による構造決定に成功した。得られた構造を基に理論計算を行い、電子状態を明らかにすることで、チオアシルラジカルへの変換が十分に起こる可能性を見出した。 (2) についても検討を開始しており、光酸化還元触媒および添加剤存在下、チオカルボニル化合物および市販で入手容易なアルケンを混合し、光照射を行うだけでカップリング体が得られることを見出した。今後条件検討や副反応の実験・理論的解析により、収率の向上が見込まれる。これらの知見は、今後チオアシラジカルの普遍的な発生法を確立するにあたり重要なものであり、硫黄含有化合物を含む、高価値な分子群の迅速合成法の開発へと繋がる可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)で示したチオカルボニル化合物の設計・合成はすでに達成しており、その構造解析や安定性の検証も行なっている。また、さらなる検討は必要であるものの、(2) についても、予想される炭素-炭素結合形成反応が起こりうることを明らかにしている。よって本研究の進捗は概ね順調であり、今後条件検討や基質範囲の探索を行なってゆけば、さらなる新反応の発見と応用へ繋がると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) については概ね達成できているが、置換基によるチオアシルラジカルの発生効率の調査は十分とはいえない。そのため次年度以降は、チオカルボニル化合物の置換基について広く調査を行い、(2)で示した新規合成反応の収率に与える影響について重心を置き、研究を推進する予定である。
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