研究課題/領域番号 |
23K13754
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
安井 基博 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (30845912)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | C-H活性化 / C-C結合活性化 / ピラゾール / ヒドラゾン / Heck反応 / パラジウム / 配向基 / シクロプロパン / ヘテロ環 / アリール化 |
研究開始時の研究の概要 |
不活性な炭素-水素(C-H) 結合を反応に利用する「C-H活性化」は従来の化学変換で頻用されてきた事前官能基化が不要になるため、工程数や廃棄物の大幅な削減が期待できる手法である。本研究ではC-H活性化を利用した反応における従来の問題点を補う新規配向基として、「アシルヒドラゾン」の有用性を実証する。具体的には、アシルヒドラゾンと遷移金属触媒を用いて種々の反応を検討することで、C-H活性化を介したピラゾール合成法を開発する。
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研究実績の概要 |
ヒドラゾンとアシル基のルイス塩基性を利用することで、パラジウム触媒によるシクロプロパンの活性化を介したピラゾール合成法を確立した。当該年度の研究では、実験と計算化学の両面から反応機構を精査することで、当初の想定とは異なるC-C結合開裂を介した機構で反応が進行することを明らかにした。これと並行して、本ピラゾール合成法を更に有用な手法に深化するため、Heck型C-Hアリール化反応を介したドミノ反応を検討した。触媒、配位子、ハロゲン化アリール、塩基、溶媒およびそれらの当量や温度を詳細に検討した結果、通常は合成することが難しいとされる置換基が隣り合う1,5-置換ピラゾールの化学選択的な合成法の確立に成功した。様々な原料およびヨウ化アレーンを見出した反応条件に附し、反応の進行を確認したところ、本手法の高い一般性が明らかになった。その後、種々の対照実験を行うことで、反応経路とそれぞれの反応剤の役割を明らかにした。さらに、生成物に含まれるアシル基の変換について、種々検討した。その結果、アシル基の化学変換は容易に行えることが確認され、「変換容易な配向基を用いた新しい化学変換」という研究開始時のコンセプトが実証された。 続いて、アミノ窒素の置換基に関する検討を行ったところ、シクロプロピル基以外の置換基では本反応は進行しなかった。この結果はC-C結合開裂を介した機構で本反応が進行する考察と一致している。そこで、シクロプロパン以外の原料については当初の戦略とは異なる不活性結合の活性化を試みた。種々検討の結果、光レドックス触媒存在下でヒドラゾンのアミノ窒素α位のC-H結合を活性化できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、新規な配向システムを利用することで不活性結合を切断し、ピラゾールを合成する新たな方法論を見出した。さらに、アリール化を伴うピラゾール合成法も確立し、有用な方法へと発展させることに成功した。 一方、反応機構を詳細に確認することはできたものの、その結果として、切断される結合が当初想定されたC-H結合ではなく、C-C結合であることが明らかになった。そのため、シクロプロパン以外の原料を用いた反応への展開が困難となり、ヒドラゾンの反応性を改めて見直す必要性に迫られた。当初の想定とは異なったものの、種々の検討を行うことで、新たな不活性結合の活性化法を見出すことに成功した。 以上の結果から、当初の計画より遅れることなく研究が進行し、一部予期しない結果が見られたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の検討で、パラジウムを用いる方法とは異なる活性化法で、ヒドラゾンのアミノ窒素α位の新規C-H官能基化が進行することを見出した。本反応ではカスケード反応が進行する三環性骨格の合成と、シンプルなC-H官能基化のいずれかが進行する。今後は当該年度に見出したこれらの知見を活かし、それぞれの反応が進行する最適な条件を見つけるための条件検討を進めていく。
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