研究課題/領域番号 |
23K13766
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
瀧本 和誉 北里大学, 理学部, 助教 (30964283)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | キラリティ / 金属錯体 / D-アミノ酸 / クロミズム / キラルセルフソーティング / 粘土鉱物 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内D-アミノ酸は近年、様々な疾患との関連が注目されている。分子キラリティを識別可能なプローブ(キラルプローブ)を用いたイメージング観察は、生体内D-アミノ酸の分布状態や機能解明のための有効な手法であると考えられるが、真に有用なキラルプローブの分子設計指針は明らかとなっていない。本研究では錯体-粘土複合体からなるキラル認識場をキラルプローブとして発展させ、それを用いた生体内D-アミノ酸のリアルタイム観察によって分布状態と疾患病態との相関を視覚的に明らかにし、キラルプローブの新たな設計指針を提案・確立する。
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研究実績の概要 |
本研究ではD-アミノ酸を立体選択的に検出するキラル認識場を構築し、それをキラルプローブとして生体組織に適用することで、生体内D-アミノ酸の機能解明を目指す。キラル認識場はD-アミノ酸を選択的に認識するキラル金属錯体と粘土鉱物ナノシートから構成される。粘土ナノシート上にキラル金属錯体を静電吸着により配列させることでD-アミノ酸への立体選択性を向上させる。 2023年度は、まず錯体-粘土複合体からなるキラル認識場を構築するために必要なキラル金属錯体の合成とそのアミノ酸認識における立体選択的効果について調査した。キラル金属錯体には、可視光領域に高い発光特性を示すとともに、配位構造に由来したΔΛキラリティを有しているシクロメタレート型イリジウム(III)錯体を選択した。アミノ酸の3つの官能基(カルボキシル基、アミノ基、側鎖)と相互作用する置換基を導入した配位子からなるキラルイリジウム錯体を合成し、アミノ酸と反応させた。その結果、適切な大きさおよび種類の置換基を配位子へ修飾することで、得られるアミノ酸錯体の物理的特性に立体選択的な差異が生じることが判明した。得られた錯体の分子構造と物性との相関について考察を進めている。 更に、合成したキラルイリジウム錯体のうち、配位不飽和な5配位キラルイリジウム錯体が自他のキラル構造を選別しながら自発的に集合する現象(キラルセルフソーティング)を示すことが分かった。興味深いことに、この錯体はキラルセルフソーティングに基づく顕著なクロミズム特性(サーモクロミズム、メカノクロミズム)も示した。そのメカニズムについて多角的な解析を行い、構造と物性の相関を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配位子への適切な置換基修飾によって、アミノ酸と反応した際に立体選択的な物性を発現するキラルイリジウム錯体の合成に成功した。更に、合成したキラルイリジウム錯体のうち、配位不飽和な5配位キラルイリジウム錯体がキラルセルフソーティングに基づく顕著なクロミズム特性を示すことも明らかとした。以上の結果により、錯体-粘土複合体からなるキラル認識場を構築するために必要なD-アミノ酸の立体選択的な認識を可能にするキラル金属錯体に成功したため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に合成したキラル金属錯体を粘土鉱物ナノシート上へ静電吸着および分子間相互作用により配列させ、錯体-粘土複合体からなるキラル認識場を構築する。そのキラル認識場のアミノ酸に対するキラル識別能を評価するとともに、生体応用に向けた適用条件を検討する予定である。
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