研究課題/領域番号 |
23K13795
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高橋 明 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50815660)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 温度応答性ポリマー / 両親媒性コポリマー / 水和 / 相転移 / ホウ酸 / 刺激応答性ポリマー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、通常は疎水性でありながら必要に応じて水和能を発現/消失できる高分子の創出を目的とする。そのような切替え可能な水和特性は、「一定の物性を示す状態」と「可変的な物性を示す状態」の2元的な状態を同一高分子に内在させることができる。これにより、例えば加工時は穏和な工程で固さや流動性を自在に変化できるが、使用する際は優れた耐久性を示すといった、高度な物性制御機能を備えた材料が実現できる。本研究では、ホウ酸の着脱により極性を劇的かつ可逆的に変化する分子ユニットをポリマー中に効果的に導入し、その構造要素と水和特性の相関を検討することで、水和能を自在に発現/消失できる高分子の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、水和能を可逆的に発現する高分子設計のための基盤的知見の獲得を目指し、ホウ酸の着脱により可逆的に極性を変化する分子ユニット(ホウ酸応答ユニット)を導入した疎水性高分子の各種構造要件と、水中またはホウ酸水溶液中における水和能との相関を系統的に評価した。 疎水性モノマーとホウ酸応答ユニット導入用モノマーを用いた可逆的付加-開裂連鎖移動重合により、ホウ酸応答ユニットと疎水構造の双方を有する両親媒性コポリマーを合成した。種々の親/疎水割合で合成したコポリマーをホウ酸水溶液中に加えたところ、いずれも下限臨界溶解温度型の相分離挙動を示した。また、その曇点は親水性のホウ酸応答ユニット割合が高いほど高温側に現れた。そこで、以降の検討では曇点を指標としてポリマーの水和能を評価した。 ホウ酸水溶液中では、ホウ酸濃度が高いほど曇点が高くなる傾向が見られた。これは、コポリマー中に導入されたホウ酸応答ユニットとホウ酸との複合体形成割合が高まり、コポリマーの水和能が高まるためと考えられる。一方、水中ではホウ酸水溶液中と比べて水和能が大きく低下し、先述の複合体形成が水和に大きく寄与することが示された。また、ホウ酸水溶液中ではコポリマー濃度が高いほど曇点が向上する傾向が見られた。これは高濃度条件においてよりホウ酸応答ユニットとホウ酸の複合体形成が促進されるためと考えられ、この仮説はモデル実験によっても支持された。次に、同一組成で分子量のみ異なるコポリマーを合成したところ、高分子量体ほど曇点が低下する傾向が見られたことから、疎水構造である主鎖が長いほど疎水性相互作用が強まることが示唆された。また、疎水性モノマーの種類の影響を検討したところ、スチレン類よりもメタクリル酸エステル類の方がコポリマーの水和能が高いことが明らかとなり、より少ないホウ酸応答ユニット割合で水和能を付与できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ホウ酸有無においてより大きな水和能の差を示す高分子の設計指針の獲得を目的としていた。前項に記載した今年度の研究結果より、コポリマーの組成・分子量・濃度、およびホウ酸濃度がそれぞれ水和能に与える影響が系統的かつ定量的に明らかとなり、より大きな水和能のギャップを生み出すための材料設計指針が見出せたことから、当初目標を概ね達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは初年度の研究で得られた結果が基づく機構をより詳細に明らかにする。ホウ素NMRによるホウ酸応答ユニットとホウ酸との複合平衡の解析など、更なる調査を進め、今回合成したポリマーが示す水和/脱水和挙動が基づく原理を分子レベルで明らかにする。また、次年度以降はより濃厚溶液系での検討に移行し、水和/脱水和に伴う巨視的な性状・物性の変化を誘起可能な高分子の開発を目指す。
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