研究課題/領域番号 |
23K13798
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
木田 拓充 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (40866290)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 分子量分布 / 結晶性高分子 / ラマン分光法 / タイ分子 / 流動結晶化 / 重水素化 / 力学物性 |
研究開始時の研究の概要 |
高分子材料にとって分子量分布は物性を左右する最も根幹のパラメータである. 特に結晶性高分子の場合, 分子量分布の形状を変化させることによって, 力学物性を千差万別に制御できることは経験的によく知られている. しかし, 結晶性高分子は複雑な結晶構造を形成するため, 分子量分布の形状の違いが力学物性に与える影響は正確に理解されていない. 本研究では, 特定の分子量成分のみが重水素化されたモデル試料を用いて, 変形過程におけるin situ赤外・ラマン分光測定を行い, “各分子量成分がどのように力学物性に影響しているのか”という高分子科学の長年の疑問を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では、特に結晶性高分子における分子量分布と力学物性の関係を解明し, 物性を向上するための最適な分子量分布を明らかにすることを目的としている. 研究手法として, 特定の分子量成分を重水素化し, 変形過程のその場ラマン分光測定を行うことで, 従来は観察が困難であった各分子量成分の構造・力学挙動を直接・選択的に観察することを目的としている. 2023年度は分子量が異なり, かつ分子量分布が十分に狭い重水素化試料を合成し, 軽水素化試料とブレンドすることによって, 特定の分子量成分のみが重水素化された部分重水素化試料を複数得ることができた. これらの試料を用いてその場分光測定を実施した結果, 臨界分子量以上の分子量成分には強い引張力が作用し, かつ高度に延伸方向へ配向していることがわかった. 一方で, 低分子量成分には一軸延伸過程であるにも関わらずほとんど力が作用しなかった. これらの結果より, 結晶性高分子の一軸変形過程では, 特定の分子量成分が力学物性に強く寄与していることを明らかにした. また, これらの臨界分子量は試料全体の平均分子量と強く関係していることも明らかになった. これらの結果はMacromolecules誌に論文として掲載された. 加えて, 分子量分布が流動結晶化に与える影響についても検討を行っている. 従来, 流動結晶化が完了した後の結晶化構造はX線散乱などで詳細に議論されていたが, 結晶化の前駆現象は測定が困難であった. 本研究ではラマン分光測定を用いて流動結晶化の前駆現象を観察し, 分子量分布との関係を議論した. これらの結果はPolymer Journal誌に論文として掲載され, Rising Stars in Polymer Science 2023にも選ばれている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り重水素化試料を合成し, 部分重水素化試料の調製にも成功した. 各試料のその場ラマン分光測定も問題なく実施できており, 本研究の基盤となる成果がすでに得られている. さらに, 当初の予定ではなかった流動結晶化の影響にも研究を広げることができており, 結晶化から力学物性まで, 幅広い対象への分子量分布の影響を議論できている. 以上のことから, 当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
固体状態における各分子量成分の変形挙動や構造状態の評価に成功したため, 今後は特定の分子量成分に対して短鎖分岐構造の導入による物性の向上効果についても, 同様に重水素化ラベル法を用いて検討する予定である. さらに, 流動結晶化の評価にも部分重水素化試料を用いて, 特定分子量成分の結晶化挙動を直接観察することに挑む予定である.
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