研究課題/領域番号 |
23K13809
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 雄一郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (40872164)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 多核錯体 / 固体リン光 / 立体効果 / リジッドクロミズム / 配座解析 |
研究開始時の研究の概要 |
固体発光材料の励起状態を制御する手法の確立は、光エレクトロニクス材料化学者に託された大きな課題である。本研究では、光エレクトロニクスを指向した「金属アゾール多核錯体の励起状態制御による発光色制御」を目的とする。錯体配位子の立体因子を精密に設計し、励起状態を制御する方法論の開拓に挑戦する。 本研究で用いる金属アゾール錯体は、その配位子の立体効果を外的刺激によって調節可能なことを大きな長所とする。その立体効果は、錯体の剛直性・励起状態の構造に重要な因子であり、発光エネルギーに影響を与える。金属多核錯体の構造と固体発光特性との相関を解明することで、固体発光材料の精密な発光色制御へ向けた指針を示す。
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研究実績の概要 |
固体発光材料の励起状態・発光色を制御する手法の確立は、光エレクトロニクス材料化学者に託された大きな課題である。本研究では、金属アゾール多核錯体の開発と励起状態制御による発光色制御を目指している。多核錯体ならびにその配位子合成と、その固体構造・光機能評価を車の両輪として進めている。これまで、銅アゾール多核錯体の構造に自由度を付与する目的で、回転可能な官能基を導入した配位子を設計し合成に取り組んできた。本研究で着目した銅クラスター錯体は、C3位とC5位に嵩高いtert-ブチル基(tBu)を導入したピラゾール配位子を有する。このピラゾールのC4位に種々の置換基を導入した誘導体を合成し、対応する配位子と金属イオンの錯形成反応により目的化合物を得た。動的な構造制御を可能とする官能基を探索した結果、アルキル基の導入が有効であることを示すことができた。粉末の光学特性を評価した結果、C4位にエチル基を導入した化合物は青色発光を示した。一方で、プロピル基、クロロプロピル基といった長鎖アルキル基を導入した化合物は緑色発光を示した。得られた多核錯体の刺激応答性を検証する目的で、粉末の熱や溶媒蒸気といった外的刺激前後の発光スペクトル測定を行った。その結果、加熱によって発光波長の長波長化が確認された。特にエチル基を導入した化合物では71 nmもの大幅な発光色変化が観測された。比較対象として、C4位に動的な構造変化部位を持たない錯体についても調査した結果、加熱前後で発光色の変化は見られなかった。以上より、アルキル基による配座構造の重要性が明らかとなった。固体状態の配座を調べる目的で、単結晶X線構造解析を行った結果、発光色変化のメカニズムには、基底状態の配座変化が関わっていることを明らかにした。アルキル鎖の配座変化が、基底状態だけでなく励起状態の構造にも深く関与していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、金属アゾール多核錯体の開発と励起状態制御による発光色制御を目指している。これまで、遠隔立体置換基効果の利用による多核錯体の「動的な構造・発光色制御」を試みている。動的な構造制御を可能とする官能基を探索した結果、アルキル基の導入が有効であることを示すことができた。得られた多核錯体の刺激応答性を検証する目的で、熱や溶媒蒸気といった外的刺激前後の発光スペクトル測定を行った結果、加熱によって発光波長の長波長化が確認された。特にエチル基を導入した化合物では71 nmもの大幅な発光色変化が観測された。発光色変化のメカニズムには、基底状態の配座変化が関わっていることを明らかにした。アルキル鎖の配座変化が、基底状態だけでなく励起状態の構造にも深く関わっていることを示した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
錯体配位子の立体因子を精密に設計し、励起状態を制御する方法論の開拓に挑戦する。固体物性だけでなく、溶液中での多核錯体のふるまいを調査し、赤色から青色まで発光波長の自在制御を目指す。 これまで、熱や溶媒蒸気といった外的刺激によって発光色の変化が可能であることを見出してきた。今後は、より能動的な発光色変化に向けて、外部電界を利用した系の構築にも取り組む。
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