研究課題/領域番号 |
23K13814
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 真人 京都大学, 化学研究所, 助教 (10813545)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 相転移 / 価数不安定性 / 強酸化条件 / 異常高原子価 / 複合アニオン / 電荷転移 |
研究開始時の研究の概要 |
Fe4+などの異常高原子価イオンを含む酸化物は、高価数状態の不安定性の解消に伴う電荷転移に起因して、巨大熱量効果などの重要な物性を示す。これらの機能特性の向上を含め本物質系の研究を大きく発展させるためには、特性発現の鍵となる電荷転移の制御を結晶構造の観点から行うことが不可欠であるが、報告物質が少なく結晶構造が強く制限されている事が大きな課題となっている。そこで本研究では、異常高原子価Feを含む複合アニオン化合物にまで探索範囲を拡大し、構成カチオンの秩序配列やFe周りの配位環境等の制御を行い、結晶構造の観点から価数不安定性の解消に伴う電荷転移を制御し、従来にはない新規物性・機能性の発現を目指す。
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研究実績の概要 |
当該年度は、異常高原子価鉄イオンを含むペロブスカイト型化合物をターゲットとして、オゾン酸化法や高圧合成法などの強酸化条件下での合成法を用いることで、新規物質の探索と得られた物質の物性測定を行った。まず、異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln:ランタノイド)については、昨年度までに6つの新物質Ln2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy)に成功しており、新たにLn2LiFeO6(Ln: Ho, Y)の合成にも成功した。また、Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)については、昨年度の段階では不純物相の存在が見られたが、合成圧力等を最適化することにより、ほとんど単相試料が得られた。さらに、磁化測定の結果から、既に論文で報告しているLn2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu)ではいずれも強い反強磁性相関が働く一方で、Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)では弱い強磁性相関が支配的であることが判明した。Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)の物性の詳細については、今後調べていく予定である。 また、異常高原子価かつ混合原子価であるFe3.5+イオンを含むAサイト層状ダブルペロブスカイトLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)の合成にも成功した。これらの物質は、酸素欠損秩序型ダブルペロブスカイトLnBaFe2O5を前駆体として、オゾンガスを流しながら低温でアニールし、トポタクティック酸化を施すことにより、いずれも単相試料が得られた。これらの物質はいずれも、Fe3.5+の価数不安定性に起因して、多段階の電荷・磁気相転移を示すことを明らかにした。Ln = Smの結果については、論文で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、新たに異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln: Ho, Y)とFe3.5+イオンを含むAサイト層状ダブルペロブスカイトLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)を合成することができ、特にLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)に関しては、Fe3.5+の価数不安定性に起因して特異な逐次相転移が現れることを明らかにすることができたことから、おおむね計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Ln2LiFeO6については、まずLn = Gd, Dy, Ho, Yの基礎物性評価を評価し、Lnイオンが構造や物性に与える影響を明らかにする予定である。また、Ln = La, Nd, Hoの中性子回折測定を行い、磁気構造解析も行う予定である。LnBaFe2O6については、Lnの違いにより、相転移温度や相転移挙動が大きく異なることから、Ln = Eu, Gd, Tb等の合成を行い、特異な逐次相転移の制御を試みる予定である。また、LnBaFe2O6は室温付近で大きな潜熱を伴う一次相転移を示すことから、巨大潜熱を生かした圧力熱量効果等の検証を行う予定である。
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