研究課題/領域番号 |
23K13822
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
宇賀田 洋介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (70975367)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | リチウムイオン電池 / 電解液 / 電極反応速度 / 薄膜電極 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、リチウム塩濃厚電解液中のLiイオンが配位子(溶媒とアニオン)を次々と交換しながら移動できる「Liイオンホッピング」という申請者が独自に発見した現象に着目し、リチウムイオン電池の電極/電解液界面での高速な電荷移動を実現する電解液の開発を目指す。具体的には、電解液の塩濃度や配位子の構造およびルイス塩基性を適切に選択することで、迅速な配位子交換が起こる高活性なLiイオンを生成し、電極/電解液界面でのLiイオンの溶媒和・脱溶媒和を促進し、高速な界面電荷移動を達成する。本研究によって、リチウムイオン電池の高出力化に資する電解液の新たな設計指針を提示できると期待される。
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研究実績の概要 |
初年度は、Li塩ープロピレンカーボネート(PC)二元系電解液におけるLiCoO2薄膜電極の電極反応速度の解析を行った。LiClO4/PC二元系において、通常濃度(1 mol/L)の電解液よりも濃厚電解液(3 mol/L)の方が電荷移動速度が大きくなることがわかった。これは電解液中のLiイオンの濃度(活量)の上昇に伴い交換電流密度が増大するためだと考えられる。一方、濃厚電解液では低濃度の電解液よりも電極反応の活性化エネルギーが大きくなることがわかった。アニオンのルイス塩基性が異なるLi塩(LiN(SO2F)2およびLiCF3SO3)を用いた濃厚電解液中においても活性化エネルギーについて調べたところ、アニオン種によらずいずれも低濃度系よりも高い値となることが確認された。これらの結果から、濃厚電解液中では活性化エネルギーが必ずしもLiイオン-アニオン間の相互作用の強さのみによって決まるわけではないといえる。Liインサーション反応の速度定数は、電解液中の溶媒の縦緩和時間(τ)に反比例することが知られており、τの増大に伴い速度定数は小さくなる。τは電解液の粘度におおよそ比例することが知られており、各電解液の粘度の活性化エネルギーはリチウム塩濃度の上昇に伴って大きくなることから、濃厚電解液における電荷移動反応の活性化エネルギーの増大には粘度の活性化エネルギーの増大も寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、種々の濃厚電解液中での電極反応速度に関して詳細な検討を行ない、着実に研究成果が出てきている。Liイオンの活量が高くなる電解液系では電極反応速度が大きくなる傾向があることが確認され、電極反応の高速化に向けた電解液設計指針が見えつつある。また、リチウム塩の上昇に伴う電解液の粘性の変化も電極反応速度に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきた。以上の進捗及び成果から、本研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度における検討により、電解液のLiイオンの活量と粘度が電極/電解液界面における電荷移動速度に影響を与えることがわかった。リチウム塩濃度の上昇に伴い、電解液のLiイオンの活量は増大するものの、粘度が高くなることで速度定数は小さくなるため、電荷移動速度はある塩濃度で極大値を示すと予想されるが、その詳細については明らかになっていない。そこで、今後はLiイオンの活量と速度定数のトレードオフの関係をより詳細に理解することで、より高速な界面電極反応を実現する電解液の設計指針が得る。また、電荷移動速度の塩濃度依存性は、電解液を構成する塩と溶媒の組み合わせによっても変わることが予想されるため、これについても検証する。
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