研究課題/領域番号 |
23K13825
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浪花 晋平 京都大学, 工学研究科, 助教 (60966331)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | クロスカップリング / 脱水素的クロスカップリング / 光触媒 / 芳香族化合物 / 光反応 |
研究開始時の研究の概要 |
固体光触媒を用いた脱水素的クロスカップリング(Dehydrogenative Cross-coupling, DCC)は,カップリング生成物と水素を同時に得られる理想的なカップリング反応であるが,非選択的なラジカル-ラジカルカップリングによりホモカップリングも進行することが問題である.本研究は,応募者が独自に見出した化学種である,固体光触媒に吸着した含窒素ヘテロ芳香族が作る表面錯合体の光励起を用いて,持続性ラジカル効果に基づく効率的なDCCを開発することを目指す.これによってDCCによる有用化合物と水素の同時生産プロセスの確立に貢献する.
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研究実績の概要 |
本研究では,固体表面に吸着した含窒素ヘテロ芳香族が作る表面錯合体の光励起を利用した効率的な脱水素的クロスカップリング反応(DCC)の開発を目的とした.今年度は光励起した表面錯合体の反応性に関する知見を得るために,含窒素ヘテロ芳香族の一つである9-メチルアクリジンと酸化チタン光触媒が作る表面錯合体の光励起を利用した酸化反応を行った. 酸化チタンは400 nm以上の光を吸収しないが,酸化チタンに9-メチルアクリジンのトルエン溶液を滴下すると,500 nm付近まで広がる新しい吸収帯が発現した.9-メチルアクリジン溶液と酸化チタンの懸濁液に対し,青色LEDで3時間光照射を行ったところ,部分酸化生成物である9-アクリジンカルボキシアルデヒドが54%の収率で生成した.光触媒がない場合または暗所では反応はほとんど進行せず,反応が9-メチルアクリジンと酸化チタンが作る表面錯合体の光励起によって進行していることがわかった. 光触媒を様々に変えて反応を行ったところ,アナターゼとルチルの混相の酸化チタンや酸化ニオブを用いた時に,より選択的にアルデヒドが生成することがわかった.またアルデヒドの収率は溶媒にも大きく依存しており,反応時間が20時間の時,DMFを用いた場合の収率は0.4%であったが,トルエンを用いると収率は20倍に向上し,62%であった. 以上の結果から今年度は,固体表面に吸着した9-メチルアクリジンが作る表面錯合体の光励起を用いて,アルデヒドへの選択酸化反応が進行することを見出し,その反応効率が,用いる光触媒や溶媒に大きく依存することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に反応装置と分析系の立ち上げを行い,9-メチルアクリジンが酸化チタンと可視光を吸収する表面錯合体を形成すること,さらにその光励起によって,9-メチルアクリジンの選択酸化が進行することを見出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
9-メチルアクリジンと酸化チタンの表面錯合体の光励起が選択酸化に有効であることがわかったため,今後はアルキルアクリジン類や他の含窒素ヘテロ芳香族,及び光触媒が形成する表面錯合体の光物性や反応性を,酸化反応をモデルに系統的に調べていく予定である.その後,得られた知見を生かしてDCCをはじめとした他の反応にも展開し,固体表面に吸着した含窒素ヘテロ芳香族が作る表面錯合体の光励起を利用した効率的な有機変換反応系を構築する.
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