研究課題/領域番号 |
23K13829
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
多々良 涼一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 講師 (20876081)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 空気電池 / 酸素還元 / ナトリウム電池 / カリウム電池 / ルビジウム電池 |
研究開始時の研究の概要 |
周期表第1族元素のうち水素~カリウムは資源量が多く、ニッケル水素電池(H)、リチウムイオン電池(Li)、ナトリウム硫黄電池(Na)、アルカリ乾電池(K)の形で利用が進んでいる。また、リチウムイオン電池との置き換えを目指したナトリウムイオン電池やカリウムイオン電池の基礎研究も活発化している。一方で、第5周期以降のルビジウムとセシウムの電池利用はまだ皆無だが、その大きなイオン半径からリチウム~カリウムでは見られない電池特性の発現が期待できる。そこで本研究ではルビジウムイオンとセシウムイオンを用いた「金属空気電池」を創成し、その蓄電池特性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有し、生活に欠かせない電池として利用されている。しかしながらリチウムイオン電池に必須なリチウム、コバルトなどは希少金属に分類され、資源確保のリスクを懸念する声も大きい。このような背景のもと元素周期表でリチウムと同族にあたるナトリウムイオン電池やカリウムイオン電池が注目を集めている。一方で、さらに後周期のルビジウムやセシウムを電池適用する検討はされてこなかった。重元素を用いるとエネルギー密度はやや低下するが、そのイオン半径の大きさから、これまで安定相として存在し得なかった化合物群を安定化できる可能性がある。そこで本提案では、これまで見過ごされてきた「イオン半径が蓄電デバイスに与える影響」に再着目し、特に金属空気電池の正極反応である酸素還元反応の基礎的な理解を試みた。 「金属空気電池」は驚異的な理論エネルギー密度を有しつつも、反応機構が未解明であり可逆性の低さが課題である。この可逆性を向上させることで、理論的には高エネルギー密度であるものの、リチウム系やナトリウム系で実現されていない金属空気電池の実証に繋がる可能性がある。本年度は、イオン半径が空気正極の電極反応に与える影響を明らかにするために空気電池セルを作製し、繰り返し充放電性能と、放電生成物である金属酸化物の長期安定性の評価を行った。ガス置換型3極式電気化学セルを用いることで空気正極単極での評価が可能な実験環境を整えることに成功し、またルビジウム系電解液を用いることで予想通り酸素還元の可逆性が向上することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金属空気電池の放電生成物である超過酸化物(AO2, A:アルカリ金属)はアルカリ金属イオンによりその安定性が大きく変わることが知られているが、イオン半径の小さいリチウムイオンの場合、超過酸化物アニオンが相対的に大きすぎるため、LiO2は安定に存在できない。一方、カリウムを対カチオンとした場合は長期的に安定なKO2を生じることが知られている。ここでルビジウムに目を向けると、イオン半径が超過酸化物アニオンとほぼ等しいため、より安定な超過酸化物を生成すると予想した。そこで実際にルビジウムイオンを含んだ電解液を用いて3極式空気電池セルを組むと、可逆性がナトリウム系、カリウム系に比べて向上し、さらに長期サイクル安定性も伸びることが明らかとなった。水分等に極めて敏感な空気セルの測定系をルビジウム系で構築でき、また本研究の基幹となるアイディアを実証できたため、今後の更なる電気化学的評価に繋がると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計算化学を用いた反応メカニズム解析により、ルビジウム系電解液中で可逆性が向上する原因を探求する。またオペランド質量分析法を用いて酸素の消費・放出を直接観測することにより、実際にどの程度反応が可逆的に進行しているかを見積り、また分解反応の寄与を定量的に把握することで、イオンサイズが酸素還元反応に与える影響を系統的に分析する。
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