研究課題/領域番号 |
23K13839
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 講司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90802702)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 合成生物学 / 分子進化 / RNAポリメラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
COVID-19に対するmRNAワクチンの成功をきっかけにmRNA創薬が注目を集める中で、修飾核酸を含むmRNAは強力なmRNA医薬品を開発するための新規モダリティとなり得る。そこで本研究では、修飾RNAに応答する合成大腸菌を作製することで、分子進化的手法により修飾mRNAを合成可能な転写酵素を作製する。本研究で開発される合成大腸菌および修飾RNA転写酵素のセレクション戦略は核酸修飾の種類に依らず応用可能であり、新規修飾 mRNAモダリティの登場に対して瞬時に対応するための革新的技術となる。
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研究実績の概要 |
mRNAは従来のワクチンや医薬品に比べ迅速に設計および製造ができるため、新しい病原体に対して短期間で対応できる次世代モダリティとして注目されている。一方で、生体内における不安定性が課題として挙げられる。この生体内安定性を向上させることができれば、mRNA医薬品の薬効を劇的に向上させる可能性がある。そこで本研究では、mRNAに化学修飾を導入すればmRNAの安定性を向上できるというアイデアをもとに、修飾を含むmRNAを転写する能力を持つ酵素の作製を目指した。初年度の研究では、修飾mRNA転写酵素をスクリーニングするために必要な合成大腸菌システムの構築に取り組んだ。まず、それぞれの酵素タンパク質やRNAの発現量とプラスミドのコピー数を考慮し、適切な発現ベクターにクローニングした。その後、それらを全て大腸菌に導入した。この菌株に対してターゲットとなる転写酵素の発現を誘導したところ、転写酵素がRNAを転写したことに応じて大腸菌が増殖しなくなることを確認した。今後は、この転写酵素が「修飾を含む」RNAを転写した際に大腸菌が正常に増殖することを確認する予定である。 並行して、修飾RNA を1分子ずつ読む技術の開発も進めた。実際に修飾量の違うRNAを複数種類用意しシーケンシングを行った結果、正しく修飾を検出できていることがわかった。これにより、mRNA中の修飾の導入数や導入箇所を定量的に解析することも目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究プロジェクトは、2年間で転写酵素の開発を目指している。初年度の目標は、分子進化により転写酵素を作製するためのシステム構築である。具体的には、転写酵素をスクリーニングするための大腸菌株を作製する実験を行い、その結果、大腸菌の増殖を酵素のRNA転写に応じて制御するシステムを構築することに成功した。この大腸菌株は、転写酵素の活性に応じて明確な反応を示すため、効率的なスクリーニングが期待できる。また、以前の研究において、この大腸菌が細胞内で修飾核酸を合成できることが確認されている。これにより、スムーズに修飾mRNA転写酵素のスクリーニングも進めることができると考えている。 さらに、このプロジェクトのもう一つの重要な柱であるRNAの1分子シーケンシング法の開発も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、転写酵素の遺伝子ライブラリを作製し、作製した遺伝子ライブラリをスクリーニング用の大腸菌に導入する。次に、増殖した大腸菌から転写酵素の遺伝子を回収し、修飾の導入に貢献するアミノ酸変異を同定する。最終的に、生化学的手法を用いて修飾mRNA転写酵素を発現・精製し、mRNA医薬の作製時に使用するプロトコルを用いて、当該酵素の活性を評価する。
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