研究課題/領域番号 |
23K13852
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木幡 愛 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (30851852)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | フッ素化学 / ドラッグデリバリー / 細胞膜透過 / フッ素 / 金ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
粘膜を突破し薬剤を送達する技術は、肺、鼻腔、腸など粘液で覆われている臓器を介した新たな投与法開発のために非常に重要である。粘液層での異物排出機構を回避するためには、糖タンパク質との相互作用を最小限にしつつ、下層の細胞内へ速やかに到達しなければならない。一方、高度にフッ素化されたペルフルオロ構造は、表面エネルギーが小さく、生体高分子と相互作用しにくいと考えられている。本研究では、効率的な経粘膜送達を目指してペルフルオロ構造を有する新規リガンドの合成に取り組むと同時に、糖鎖やリン脂質膜など生体高分子との相互作用におけるフッ素化の意義を実験的に評価し、DDSの分子設計指針を見出すことに挑戦する。
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研究実績の概要 |
高度にフッ素化されたペルフルオロ化合物は、表面エネルギーが小さく、有機相とも水相とも混じり合わずに第三相を形成するということが有機化学・物理化学の分野で知られて いる。そのため脂質二重膜や糖鎖をはじめとする生体高分子と親和性が低いと考えられており、高度にフッ素化された化合物は無毒性の細胞膜透過能を有するリガンドとして、近年DDS開発が進められている。本研究課題では、粘膜組織への薬物送達においてペルフルオロ化合物は有効であるのか、 どのような分子デザインが粘液層の浸透に適しているのか、という点を明らかにする。 今年度は高度にフッ素化リガンド分子の構造最適化を行なうため、比較的実験が容易な癌細胞を用いて細胞内送達実験を行なった。ペルフルオロアルキル基やペルフルオロエーテル基を有する蛍光分子を種々合成し、それらの細胞送達内効率を共焦点顕微鏡ならびにフローサイトメトリーによって調査した。膜浸透性の高い分子設計のためには、分子の水溶液中での凝集を防ぎフッ素分子が細胞膜界面へと露出する様な構造が一番重要であることがわかった。また、エネルギー依存的なエンドサイトーシスを介さない経路で、すみやかに細胞質へ到達していることが示唆された。高度にフッ素化された分子は人工リン脂質膜表面の水和層を破壊し、細胞膜への透過能を高めていることがラマン分光法およびリポソームの融合実験から明らかとなった。以上の知見をもとに既知の抗がん剤の送達に挑戦したところ、抗がん剤の細胞死誘導率を高めることに成功した。 本研究成果について特許を出願し、現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘膜組織への薬物送達の調査にあたり、まずは癌細胞への膜透過能をさまざまな形状のペルフルオロアルキル基やペルフルオロエーテル基を有する化合物を用いて調査した。 その結果、環状ペルフルオロエーテル構造が目的を達成するために非常に有力であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた水溶性の高い環状ペルフルオロエーテル構造を用いて、19F-MRIプローブへの応用を目指し、ファントム画像の取得および in vivo体内動態試験を行う。in vitroにおける実験では粘膜細胞など種々の組織の細胞を購入し、さまざまな細胞腫への取り込み能を調査する。
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