研究課題/領域番号 |
23K13863
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永久保 利紀 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20826961)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 放線菌 / ファージ尾部様粒子 / リボソーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、原核生物に高度に保存されている非感染性ウイルス様ナノ粒子が細胞内で担う生物学的機能のメカニズムを解明する。細菌や古細菌を含む多くの原核生物のゲノムには、それらの微生物に感染するウイルス (ファージ)の尾部に似たナノ粒子を構成する遺伝子群が頻繁に見出される。しかし、ほとんどの微生物種においてはそれらのファージ関連遺伝子群の機能と存在意義は不明のままである。これまでに、本申請者は放線菌が生産するファージ尾部様ナノ粒子がタンパク質合成を担うリボソームタンパク質と相互作用することを見出しており、本研究課題ではこの前例のない現象のメカニズムと生物学的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
当該年度においては、本研究課題の目的である放線菌のウイルス様粒子の機能解明に近づく研究成果があげられた。本研究課題で研究対象とする放線菌S. lividansが生産するウイルス様粒子SLPにHis6タグを付加し、Ni2+アフィニティクロマトグラフィーと定量プロテオーム解析に供することで、SLPに付随するタンパク質の網羅的な同定が可能になった。その結果、複数の機能未知タンパク質(W,X)が同定され、そのうちの2つがSLPをコードする遺伝子クラスターの近傍に位置する遺伝子によってコードされていることが明らかになった。これらのタンパク質のうち1つ(X)は、SLPが属するウイルス様粒子のクラスであるcontractile injections systemsの積荷タンパク質に特有のコアドメインを含んでいた。さらに、このタンパク質(X)はもう一方のタンパク質(W)のN末端領域と相互作用することも明らかになった。これらの結果は、上記の2つの機能未知タンパク質のペア(W,X)からなるタンパク質複合体が、SLPの積荷タンパク質であることを示唆している。また、上記タンパク質ペア(W,X)のうちタンパク質(W)を大腸菌で異種発現させたところ、大腸菌の生育が顕著に阻害されることも見出された。これは、タンパク質(W)が細菌細胞の生育に必須な分子に対して作用することを示唆しており、このタンパク質がSLPの機能の根幹をなす因子の有力な候補として挙げられた。加えて、上記成果のうち単離SLP画分を用いたプルダウン-プロテオーム解析の結果を含む研究論文が、米国微生物学会(ASM)が発行するジャーナルに受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で着目する放線菌のウイルス様粒子とリボソームの相互作用に関して、そのメカニズム解明の鍵となるタンパク質(W,X)の同定に成功したため、本研究課題は概ね順調に進展しているといえる。タンパク質(W)は大腸菌での異種発現が困難であったが、コンストラクトや発現条件の検討により、タンパク質間相互作用解析の実施に十分な量のタンパク質(W)を得ることができ、さらにこれを用いてタンパク質ペア(W,X)間の相互作用を示すことができたことは大きな進展といえる。加えて、タンパク質(W)が大腸菌の生育を阻害することが見出されたことは、本研究課題の遂行に大きく寄与する発見である。この現象に着目して本タンパク質の機能を詳細に明らかにすることで、謎の多いウイルス様粒子の機能に関する普遍的かつ新たな概念の提唱につながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に同定したタンパク質(W,X)の詳細な機能解析を実施する予定である。特に、本研究課題で着目するSLP-リボソーム間の相互作用と上記タンパク質ペアの関連について調査を進める。タンパク質(W)が大腸菌に対して生育阻害を引き起こすことに着目し、この生育阻害効果が大腸菌のリボソーム機能に与える影響を調べる予定である。タンパク質(W)とリボソームの関連が明らかになった場合、同様の現象が元々の生産菌S. lividansのリボソームについても見出されるかどうかを解析する。また、これらと並行して、タンパク質ペア(W,X)がSLPに付随するメカニズムについても解析を進める。具体的には、これらのタンパク質とSLPを構成するサブユニットタンパク質間の相互作用の検出を試みる。代表者の先行研究において、タンパク質(X)と同じコアドメインを有するタンパク質が、SLPが属するウイルス様粒子のクラスであるcontractile injection systemsの基部スパイク複合体と相互作用することで上記粒子に搭載されることが示唆されているため、これを参考にしてSLPの基部スパイク複合体とタンパク質(X)の相互作用を検証する。
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