研究課題/領域番号 |
23K13872
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
棚橋 亮弥 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任助教 (30908330)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | Saccharomyces cerevisiae / non-Saccharomyces / proline utilization / yeast culture collection / ワイン醸造 / 酵母育種 / プロリン代謝 / Yeast Culture Collection |
研究開始時の研究の概要 |
酵母Saccharomyces cerevisiaeはワインなどの醸造に用いられ、酵母による原料の資化 (細胞内への取込みと代謝) が酒類の味や風味を決める。プロリン (Pro) はブドウ果汁等の醸造原料に最も多く含まれるアミノ酸であるが、ワイン酵母はProをほとんど資化できないため、発酵後もワイン中に多量に残り、苦味の増加などの酒質低下を引き起こす。本研究では、Pro資化の抑制に関わる遺伝子群を網羅的に同定し、Pro資化抑制の分子メカニズムを解明する。また、ゲノム編集技術を用いてProを効率良く資化できる菌株を創製し、Pro高資化性酵母の実用化を目指す。
|
研究実績の概要 |
まず、合計約200株のSaccharomyces属およびnon-Saccharomyces属の酵母に対し、イサチンを用いた簡便なプロリン資化能評価法を実施したところ、産業用酵母で幅広く用いられるSaccharomyces属はPro資化性が低いことが確認できた。また、Metschnikowia, Millerozyma, やWickerhamomyces属等の酵母はPro資化能が高いことが判明した。興味深いことに、Pro資化性は低いものの、Saccharomyces属の酵母においても少ない割合でProを資化する酵母が存在した。遺伝学的なアプローチが簡便であることから、新たに約1000株のS. cerevisiaeを対象にスクリーニングを実施し、Pro資化抑制に関わる分子機構の網羅的な解明を試みた。その結果、約70株のS. cerevisiaeを取得した。また、これらのPro資化性酵母からゲノムDNAを抽出・精製し、全ゲノムシーケンスを実施した。全ゲノムシーケンスおよびそのデータ解析の結果、転写因子群およびシグナル伝達に関与する遺伝子群が抽出された。計36の候補遺伝子群について、各一遺伝子欠損株を作製し、Pro資化能を評価した。その結果、転写因子であるArg80およびユビキチンリガーゼ複合体の構成因子であるApc9遺伝子の欠損によりPro資化が大きく向上することが示された。 これまでの研究では、既知のPro資化経路の強化を重点的に進められてきたが、実用レベルでのPro消費量を達成していない。その要因として、Pro資化を強く抑制する機構やその原因となる遺伝子が不明であることが挙げられる。それに対して本研究では、約1,000株を用いたスクリーニングを通じて未解明であるPro資化抑制機構の全体像の一旦を解明した。これにより、真に実用できるPro高資化性酵母の構築が可能となりつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、1-2年目を通じて実施するスクリーニングが完了した。また、全ゲノムシーケンスも完了し、候補となる遺伝子の抽出も完了した。以上は、当初の計画通りである。今後、詳細なメカニズムの解析、および醸造への応用が課題となる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画については、当初の予定通りに進める。つまり、今年度は同定された遺伝子によるPro資化抑制機構の詳細について解析を進める。これと並行して、産業用酵母を用いて、同定遺伝子の遺伝子欠損あるいは機能獲得変異を導入し、Pro資化がワイン醸造に及ぼす影響について解析する準備を進める。
|