研究課題/領域番号 |
23K13878
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森永 花菜 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 学振特別研究員 (60869692)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 腸内細菌 / 寄生細菌 / 嫌気 |
研究開始時の研究の概要 |
超微小細菌「TM7候補門細菌」は、異種細菌に寄生して生存することが明らかにされつつある。TM7に関する研究は、口腔を対象に盛んに進められてきた。一方で、腸内においては、メタゲノム解析によりその存在が示唆されているものの、TM7が腸内でどのような細菌種に寄生しているのか、またその結果、TM7が腸内微生物生態さらにはヒトの健康にどのような影響を与えるかについては未だ多くが謎に包まれている。本研究では、腸内TM7は、どのような腸内細菌に寄生するのか、また、腸管内のどこに生息するのかを明らかにする。さらに、腸内TM7の寄生様式を詳細に解き明かすことで、TM7の腸内微生物生態系における役割の実態に迫る。
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研究実績の概要 |
超微小細菌「TM7候補門細菌」は、アミノ酸合成能など多くの栄養獲得能を失い、異種細菌に寄生して生存することが明らかにされつつある。TM7門細菌は、環境中に広く分布していることから、地球上の多様な環境下の微生物生態系に影響を与えていることが推測されており、その挙動が注目されている。TM7に関する研究は、口腔を対象に盛んに進められてきた。一方で、「腸内」においては、メタゲノム解析によりその存在が示唆されているものの、TM7が腸内で、どのような細菌種に寄生しているのか、またその結果が腸内微生物生態さらにはヒトの健康にどのような影響を与えるかについては未だ多くが謎に包まれている。本研究では、腸内TM7は、どのような腸内細菌に寄生するのか、また、TM7は腸管内のどこに生息するのかを明らかにすることを目的とした。さらに、腸内TM7の寄生様式を詳細に解き明かすことで、TM7の腸内微生物生態系における役割の実態に迫ることを目的とした。 今後、マウスの腸内を対象として研究を進めることを想定している。そのため、今年度は、今後の実験に用いるマウスの系統を決定した。TM7が多く存在するマウスの系統を推定するため、まず、多様な遺伝系統のマウスの糞便サンプルの16S rRNAアンプリコン解析を行った。その結果、特定の遺伝系統のマウスにおいて再現性よくTM7を検出することができた。本結果より、今後の研究において、腸内TM7が安定的に検出可能な特定の系統のマウスを用いることとした。さらに、腸内TM7を集積培養するための培養条件の検討を行った。多様な条件下でマウスの糞便を嫌気的に培養したところ、TM7の維持が可能な培養条件を見出した。来年度は、TM7が多く存在する系統のマウス糞便を用いて、本条件で培養することによりTM7を集積培養さらには分離培養することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、TM7が多く存在するマウスの系統を推定した。腸内TM7がどのような菌に寄生し、さらに、腸管内のどこに生息するのかを明らかにするため、TM7が多く存在するマウスの系統を見出すこととした。まず、多様な遺伝系統のマウスの糞便サンプルの16S rRNAアンプリコン解析を行った。その結果、特定の遺伝系統のマウスにおいて再現性よくTM7を検出することができた。本結果より、今後の研究において、腸内TM7が安定的に検出可能な本系統のマウスを用いることとした。 さらに、腸内TM7を集積培養するための培養条件の検討を行った。腸内細菌の培養に適した各種培地や、TM7の分離が報告されている培地を用いて培養を試みた。また、抗生物質を添加する、培養の温度帯を変更するなど、様々な条件下において、マウス糞便を播種し、継代を繰り返した。最終的にTM7が保持されているかを16S rRNAアンプリコン解析によって確かめたところ、いくつかの条件において、TM7が異種細菌に淘汰されることなく培養されたことが明らかとなった。本条件下で、TM7が多く存在する系統のマウス糞便を培養することで、TM7の集積培養さらには分離培養が可能になることが期待された。 今年度は、2024年1月より研究を中断しているため、実験に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TM7が多く存在するマウスの各臓器にどのような種類のTM7がどれくらい存在するのかを明らかにする。TM7の量が多いことが明らかになった腸管部位を用いて、その後の研究を行う。 続いて、腸内TM7の宿主細菌を遺伝学的情報から推定する。シングルセルゲノム解析法を応用し、TM7-宿主細菌の「ペアセルゲノム解析」を行う。TM7と常に一緒に検出されるゲノムを解析することで、宿主細菌の推定が可能となる。本手法を用いることで、腸内に、複数種のTM7が存在する場合でも、その種ごとの宿主細菌の推定が可能となる。 続いて、それらの情報を元に、FISH法 (Fluorescence in situ hybridization法) 及び定量PCRにより、マウス腸管内でのTM7及び宿主細菌の位置情報を明らかにする。口腔、小腸、大腸、糞便などの腸管試料を観察することで、TM7の空間分布を解明する。 また、同時に、マウス糞便より、腸内TM7の集積・分離培養を試みる。 以上の研究を通じて、細菌寄生性細菌・TM7は腸内で、生きて存在するのか、さらにそれらは、どのような細菌にどのような様式で寄生しているのかの実態に迫る。
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