研究課題/領域番号 |
23K13882
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 綾 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80825646)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | タンパク質ライゲーション / 区分同位体標識 / マルチドメインタンパク質 / 中性子小角散乱法 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質ライゲーションとは、タンパク質同士を繋ぎ合わせる技術である。この技術により安定同位体で修飾/未修飾のドメイン(特定の機能と構造を持つアミノ酸配列の領域)を繋ぎ合わせることで、区分同位体標識試料を調製可能である。本試料は特定ドメインに着目した構造解析を可能にする。しかし、マルチドメインタンパク質に適用できるような、機能と構造を保持したまま多段階で効率よくライゲーションする技術は十分に確立されていない。そこで酵素を用いた新規ライゲーション技術を確立し、幅広いタンパク質への適用を目指す。さらに、区分重水素化試料を調製して中性子の小角散乱測定による特定ドメインの選択的構造解析を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は酵素を用いたタンパク質ライゲーションの実用化に向けて、問題点の洗い出しとその解決を図った。まずはライゲーション産物の安定性の問題に着手した。同じ認識配列、位置でライゲーションした産物であっても、ロットによっては後の測定中に分解してしまうことがあった。分解したライゲーション産物をSDS-PAGEやキャピラリー電気泳動、質量分析によって評価することで、この分解は産物溶液中のライゲーション酵素の極微量な残存によるものであることが示唆された。そのため、確実にライゲーション酵素を除くことが可能な精密な精製方法を確立した。また、ライゲーション反応を確実に停止できるようなライゲーション酵素の機能を直接阻害する分子も探索中である。 幅広いタンパク質へ本ライゲーション技術を適用するために、様々な部位に様々な認識配列を付加した基質 (チオレドキシン、βB2クリスタリン、GFP)の大腸菌発現系を構築した。また、これまで研究を進めてきたOaAEPの他に、認識配列の異なるライゲーション酵素であるButelaseについても発現系を構築し、ライゲーション条件検討の準備を進めている。 さらに、酸化的フォールディング酵素ER-60について、中性子小角散乱(SANS)法で精密な構造情報を得るために、二段階ライゲーションによる区分重水素化試料を大量に作製することにも成功した。これは上記のライゲーション産物の安定性の向上と、ライゲーション位置、酵素や基質の濃度比率といった反応条件の綿密な検討を行うことで達成された。試料純度および品質についても超遠心分析や質量分析、X線小角散乱法によって担保されている。現在、この試料を用いてドメイン選択-逆転コントラスト同調(DS-iCM)-SANSの測定と解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度において完了を予定していた酵素を用いたライゲーション技術の確立については、研究を進めていくにつれ、当初よりも検討すべき事項や克服すべき問題点が見つかったため、予定より少し時間を要している。しかしながら、それらは本研究のように酵素を用いたライゲーション技術の実用化を目指すにあたって初めて顕在化した問題点であるため、実用化には解決が必須であり、時間をかけて解決に注力するに値する問題であると考えられる。 また、最終目標である中性子の散乱測定に供試できる量の区分重水素化試料を大量に作製することに成功するレベルにまでライゲーション技術を高めることができ、中性子の散乱測定についても測定と解析を進める段階まで進んでいる。 さらに、ライゲーション技術の幅広いタンパク質への適用についても、2024年度での達成に向けて、様々な基質や異なる酵素の準備も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においてはライゲーション産物の安定性の問題をさらに克服するため、ライゲーション反応を確実に停止できるようなライゲーション酵素の機能を直接阻害する分子を探索する。 また、幅広いタンパク質へ本ライゲーション技術を適用するために、様々な基質を用いて、ライゲーション位置、リンカーの長さ、アミノ酸の電荷、疎水性/親水性による相違を検討し、効率的なライゲーション反応に必要な構造と配列の一般的指標を確立する。また、認識配列の異なるライゲーション酵素Butelaseを用いて、幅広い認識配列への本法の適用を目指す。さらに、酸化的フォールディング酵素ER-60のDS-iCM-SANS測定によるドメイン選択的な構造解析についても引き続き進めていく。
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