研究課題/領域番号 |
23K13893
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石井 希実 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (60895275)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 糖鎖分子プローブ / 酵素活性検出 / FRET消光 / ENGase / 糖鎖 / 酵素活性 / 化学プローブ / Endo-S |
研究開始時の研究の概要 |
Streptococcus pyogenes由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-S)は、抗体のFc領域に結合した糖鎖を切断する糖加水分解酵素である。抗体医薬品の糖鎖構造解析による品質管理のために必須の酵素であるが、Endo-Sの酵素活性を高感度かつ簡便に検出できる化学プローブはない。本研究では、Endo-SのX-線結晶構造情報を基に有機合成化学的手法を駆使することで蛍光性置換基および消光性置換基の導入位置の最適化、糖鎖骨格の最適化、ペプチド構造の導入を検討し、切断効率の高い基質構造を見出すことでEndo-Sによって「切断されたら光る」化学プローブを開発する。
|
研究実績の概要 |
Streptococcus pyogenes由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-S)は、抗体のFc領域に結合したアスパラギン結合型糖鎖を切断する糖加水分解酵素である。抗体医薬品の糖鎖構造解析による品質管理のために必須の酵素であるが、Endo-Sの酵素活性を高感度かつ簡便に検出できる化学プローブはない。本研究では、Endo-SのX-線結晶構造情報を基に蛍光性置換基を修飾した糖鎖基質をデザインし、FRET消光の原理を利用した「切断されたら光る」化学プローブの合成を行った。文献で報告されているEndo-Sと二本鎖複合型糖鎖の共結晶構造によると、Endo-Sの基質結合部位にある二本の溝(Groove1およびGroove2)に糖鎖の分岐鎖部分が結合している。そこで、Groove1,2との親和性を期待して、蛍光性置換基を糖鎖の非還元末端部分に導入したプローブをデザインした。具体的には、糖鎖のガラクトース残基の代わりに蛍光性置換基を導入することで、天然の基質構造に近づけ、立体障害が生じにくい糖鎖分子プローブを合成した。得られた分子プローブの蛍光寿命測定を行い、FRETにより分子プローブが消光していることを確認した。分子プローブをEndo-Sで処理したところ、キトビオース部分のグリコシド結合が切断されたことから合成した分子プローブがEndo-Sの基質となることを確認した。さらに、マイクロプレートリーダーにより酵素反応液の蛍光強度を測定することでEndo-Sによる糖加水分解反応をリアルタイムに追跡できることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進捗について、以下のような一定の成果が得られた。 Endo-SのX-線結晶構造解析の情報から、基質結合部位のLoop2と蛍光性置換基との間で立体障害が生じると基質として認識されず、活性検出ができないと考えられた。そこで、Endo-Sの活性検出プローブの構造として、蛍光性置換基の導入位置をLoop2を避けて、糖鎖の非還元末端部分にした分子プローブをデザインした。具体的には複合型のアスパラギン結合型糖鎖の非還元末端部分にあるガラクトース残基の代わりに蛍光性置換基を導入した糖鎖分子プローブを合成した。得られたプローブはEndo-Sの基質となり、糖加水分解を受けることを確認した。また、マイクロプレートリーダーを用いて酵素反応を追跡した結果、反応時間の経過とともに反応液の蛍光強度が増加したことから、リアルタイムにEndo-Sの酵素活性を検出できることを確認した。本成果については特許出願が完了し、論文化を進めているため、「おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
1)非還元末端部分のガラクトース残基の代わりに蛍光性置換基を導入することで、Endo-Sの加水分解反応を追跡することが可能となった。今後は、検出感度の向上を目指し、基質構造の最適化を進める。具体的には、以下のように進める。 1ー1)糖鎖基質の2つ分岐鎖の末端のガラクトース残基の両方が蛍光性置換基に置換された基質の合成を進める過程で、片側だけが蛍光性置換基で修飾された基質のFRET効率が異なる可能性を見出した。そこで、糖鎖分岐部分のマンノース残基の3位ヒドロキシ基から伸長した分岐鎖の末端のみ、あるいは6位ヒドロキシ基側の末端のみに蛍光性置換基を導入した基質を合成し、FRET効率と糖加水分解効率の両面での観点から適している構造を選択する。 1-2)抗体の糖鎖付加部位のAsn-273残基のN末端、C末端側にそれぞれ2-4残基ずつアミノ酸を 付加した糖ペプチドプローブを合成する。これにより還元末端ペプチド残基の導入による基質認識能の向上が可能であるか検討する。 2)光物理化学的特性の測定及び反応速度論解析を通して、Endo-Sの活性検出用化学プローブとしての有効性を示す。
|