研究課題/領域番号 |
23K13905
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 祥也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90825845)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 乳酸菌 / 表層タンパク質 / リポ多糖 / 抗炎症機構 / 相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
乳酸菌における細胞表層タンパク質(SLP)は、炎症疾患や感染症に対する保健効果が期待される免疫機能性成分である。一部の乳酸菌由来のSLPにはマウスの大腸炎の改善効果が認められているが、その根本的な抗炎症機構は明らかになっていない。申請者は最近、日本酒の腐敗や腐造を引き起こす乳酸菌(Lentilactobacillus hilgardii H-50、H-50株)のSLPがリポ多糖(LPS)に結合することで抗炎症作用を発揮することを明らかにした。そこで本研究では、LPSとの相互作用に着目し、乳酸菌由来SLPの新たな抗炎症機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
乳酸菌における細胞表層タンパク質(SLP)は、炎症疾患や感染症に対する保健効果が期待される免疫機能性成分である。本研究では、乳酸菌由来SLPによるリポ多糖(LPS)結合能に着目し、乳酸菌由来SLPの新たな抗炎症機構の解明を目指している。 初年度は、まず5種類の乳酸菌由来SLPにおけるLPS結合能を調査した。SLPは、LPS結合能と抗炎症作用が既知のLentilactobacillus hilgardii H-50、その標準株であるJCM1155T、抗炎症作用が既知のLactobacillus acidophilus JCM1132TおよびLactobacillus crispatus JCM2009、免疫調節作用が既知のLevilactobacillus brevis JCM1059Tから調製した。各種SLPをSDS-PAGEにて展開し、膜転写後、ビオチン化LPSとHRP標識ストレプトアビジンで染色したところ、全てのSLPにおいてLPS結合性を示すシグナルが見られた。また、各種SLPと大腸菌由来LPSをDMEM培地中で反応後、遠心分離により得られる上清中の遊離LPS濃度をリムルス試験により測定したところ、LPS対照処理と比較して抗炎症作用が既知のH-50、JCM1132TおよびJCM2009株のSLPにおいて有意な減少を示した。 次いで、H-50株由来のSLPのリコンビナント(r)タンパク質を発現する大腸菌の構築を試みた。ここではまず、H-50株の全ゲノムDNAの解析とSLPのN末端アミノ酸配列解析を通してH-50株のSLPのゲノムDNAとアミノ酸配列の同定に成功した。その後、同定したDNA配列を含むpET22bプラスミドを構築し、BL21株における形質転換株を作製したが、rSLPの発現は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、①乳酸菌由来SLPのLPS結合能の評価と②H-50株のLPS結合型SLPの精製(②-1 H-50株のSLPのDNAおよびアミノ酸配列の同定、②-2 遺伝子組換え大腸菌におけるH-50株由来SLPの精製)を計画し、予定通り全ての実験計画に着手し、成果を残すことができた。一方で、②-2の研究においては、タンパク質レベルでのリコンビナントSLPの発現が見られなかったため、精製も未だ完了できていないが、ベクターやホスト株のパターンを変更することで新たな研究戦略で研究を滞りなく進めている状況である。この新しい研究戦略でのSLP精製は令和6年度の夏ごろまでに完了する予定であり、その後の③大腸炎モデルにおける経口投与試験や④急性毒性試験も問題なく令和6年度内に完了できると考えている。 以上より、概ね順調に賢雄が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】に記載した通り、令和6年度は引き続き、遺伝子組換え大腸菌におけるH-50株由来SLPの精製に関する研究を遂行する。当初の予定との具体的な変更点として、pCold ProS2ベクターにH-50株由来SLPのDNA配列をクローニングし、ProS2-SLP融合タンパク質として発現させ、可溶性SLPの精製を目指す。 また、当初より令和6年度に計画していた③大腸炎モデルにおける経口投与試験や④急性毒性試験も実施する。
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